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【第一章完結!】猫又でーす、異世界にいまーす。  作者: くろこげめろん
第二章 新大陸

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63 捜索隊

「……?」


 しろがスタジアムの外のカフェで連れと一緒にアイスクリームを食べていると、穏やかな街中に一人だけ異様な雰囲気の男を見つける。


 サングラスにタキシードの黒ずくめという時点で怪しさ満点なのだが、膨大な魔力、プラス魔道具かなにかの別種の魔力ふたつを保持しているので非常に目立った。……とはいえそういうのに敏感なしろからすればの話で、通行人たちは全く気が付いていないが。


 それをよく見るために立ち上がってみると、連れの少年――菱暮慧(ひしぐれけい)がすぐに反応した。


「なにか見つけたの? あーあ、面倒ごとは避けたいんだけどなぁ……」


 黒髪黒目の高校生ほどの少年。とくにイケメンでもないが、不細工でもない、平凡でだいたいの人に好印象を持たれそうな顔だ。


 彼はなんとなくこれから訪れるであろう面倒ごとの気配を察知し、大きくため息をついた。

 もう一人の連れである茶髪の少女――ミラ・クリスタが首をかしげる。


「あのタキシード野郎ですか? こりゃまた物騒な気配ではありますね」

「……犯罪者に間違いない。強い。夜にする」


 しろの『夜にする』という発言に、ミラはにやりと唇を歪め、慧は慌てて立ち上がった。


「え!? ちょっ、ちょ、それはまずいって! いくらなんでもそこまでしなくたって……」


 だが慧の制止も空しく、しろが指を鳴らすと同時に空は暗く染まり、ぼんやりと白い月が浮かび上がる。先ほどまで街をさんさんと照らしていた太陽は、どこへ消えたのか見る影もない。


「さぁーて、一仕事と行きますか!」

「なんでミラまでノリノリなの!? ねえ! あああーもうっ! 僕はやだよぉおおーっ!」


 空の闇と慧の絶叫がうまいこと周囲の視線を引き、活動をぱっぱと開始したしろとミラは存在感ほぼゼロで動き始める。


 ミラは狙撃手気取りで屋根の上へ上り、弓を構えようとする。だがしろが男の入った路地裏を指さしたので、狙撃手はキャンセルとなった。


「路地裏で薬物の取引とかですか? また、かなり堂々としてますねぇ」

「アジト。転移」


 しろが発したその二単語で状況を理解したミラは、男が使おうとしている転移魔法に自身も割り込むべく魔法の解析を開始する。


「……座標は特定しました。飛びますよ」

「待って! 置いてかないで!!」

「分かってますって」


 三人を巻き込んで周囲の景色が一瞬で消え去り、ふわりと宙を浮いているような感覚を覚える。その直後にミラたちが立っていたのは、暗くて広い石造りの牢屋のような場所だった。


 そこに同時に転移してきた黒ずくめの男が一行を視認し、サングラスを外してから面白そうな笑みを浮かべる。右目の中に星がある、特徴的な瞳だ。


「あの魔道具に割り込むか! なかなか強そうだな!! ――せいっ!」


 突如として男がサングラスを投げつけてくる。空気中を途轍もない速度で飛んだせいでぐしゃぐしゃになり、針のような状態へなったサングラスはしろですら反応できずに心臓の位置を貫く。


 だが、心臓を貫かれ血を大量にぶちまけたはずのしろは後ろによろめいただけで止まり、すぐに魔法を使って反撃を仕掛ける。


「『マイ・アメイジング・ワールド』」

「すごい魔力だな! いいぞいいぞ!!」


 宙に出現した小さな月を男が殴って破壊しようとするが、慧がいきなり割り込んで妨害する。


「『ガード』」


 魔法の発動と同時に慧がネックレスにしている空色の歯車がぽわりと光り、暖かい魔力が慧を包み込む。


 慧ごと月をぶち砕こうとした男だったが、その慧の体に拳が振れるやや直前で何かに当たって止まってしまう。


 その隙を逃さずにしろが飛び蹴り、ミラが各属性の弾を出現させて攻撃する。


「はっはっは! トルネードだーッ!!」


 跳びかかってきたしろの足を男がひっつかみ、猛烈な速度で回転して技名の通りトルネードを発生させる。


「よくないぞそういうの! かわいそうでしょ!?」

「戦いには結果だけが付きまとう!! 勝てば官軍負ければ賊軍ってわけだ!!」


 ミラの魔法攻撃をすべてはじいた後にボールのように投げ飛ばされ、壁の石に小さくクレーターを作る。


「……」


 それでもすぐに起き上がったしろは不愉快そうな表情を浮かべた。


「罪は」

「誘拐といったところか! 結果的には世界を救うつもりだがな!!」


 言葉足らずのしろの発言だが、男は意味を正確に読み取ったらしい。慧は内心、「この人意外と賢いかも!」と驚いた。


 一行がどうすべきか迷っている僅かな合間に男は三人の分析を行う。


「ははは! 面白いメンバーだな! とんでも魔力の白猫、身体能力怪物と魔法万能天使か!! 久々に面白いやつを見たぞ!!」

「そこまで分かるのかぁ……」


 慧を包んでいた『ガード』のバリアが霧散し、すとんと体が地に落ちる。魔法の維持はまったく疲れもしないのに魔法を解除したのは隙をさらすも同然だが、男は攻撃を仕掛けることはしない。

 なぜなら、街中に置いてあった転移用の魔道具からシグナルが送られてきたためだ。


「お……別のやつらも来るようだな! ふはは、なかなか楽しい一日になりそうだ!!」


 その言葉と同時に空間がぐるりと歪み――アップヒルとクェドが男へ向かってつっこんできた!

 更新が全然できてません……。すみません。

 この作品のストックが尽きかけているので、別の作品のストックを放出していますなう。よかったらそっちの方、見て頂けると助かります……。この作品の更新頻度が地に落ちておりますので……。

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