61 ゴールドマジック
キィイイイイン!
結界を全力で張った僕の腕と大剣がぶつかり、甲高い金属音を立てる。
「せやぁっ!」
力任せに大剣を押し返し、『ウォーターガン・フォール』とキックで反撃を仕掛ける。
だが、魔法の攻撃はしろに近づいた瞬間溶けて消えてしまった。慌てて僕も飛びのき、状況を確認しようとする。
「考えてる暇なんて、ないよ」
「っ!」
一瞬でしろが僕へ迫る。全く見えなかった……!
すぐに『スペシャルズ』で剣をまた創り出し、黄金の大剣を受け止める。くそう、思考を素早くできる魔法とかがあったらよかったのに。
それにしても、なんで固有魔法をふたつも持ってるんだ? アバクもそうだったが、あれは人外っていうか神々しいレベルまで行っていたので置いておく。
だが、しろは明らかにそこまでのレベルではない。僕と同じ猫又にしろ、猫の獣人かもしれないが、固有魔法をふたつ持っているのは不思議だ。
……なんにでも例外があると言ってしまえばそれまでだが。
「『マイ・アメイジング・ワールド』」
「『ラグナロク』ぅううっ!!」
瞬時に自分だけを結界で覆い、スタジアム全体を巻き込む高威力の爆発を発生させる。
その爆発が出現した月を一瞬で砕いた。
土煙がなかなか晴れないまま、勘だけを頼りにしろの方へ飛んでいく。
「気づいてないの? 落ちてるよ」
「え――あうっ!?」
しろの声が聞こえた直後、頭に強い衝撃を感じる。
すぐに風魔法で煙を吹き飛ばすと、どうやらスタジアムの壁に激突したみたいだった。しかもかなりの速度で……すごく、痛い。
いっぽうの空をふよふよと浮いているしろは余裕があるみたいで、表情は能面みたいだが攻撃もしてこない。
「……」
すぐに回復魔法を使いつつ、ようやく思い出したのでしろの『マイ・アメイジング・ワールド』を分析する。ふむ……。
それは小さな月を具現化させる魔法で、それを一瞬でも目に入れた生物の人生のタイムラインを切り張りする魔法のようだ。
具体的に言えば、例えば未来で『剣で斬られて大ダメージを負う』のなら、それをコピーして現在にペーストし、その斬撃によるダメージを付与できる。
そして設定項目として『それによって追加で発生する現象を許可するかどうか』が設定できるらしい。
斬撃かどうかは分からないが、先ほど真っ二つになったのはその切り張りの効果。なぜか真っ二つになってもゲームが続いているのは、後者の設定により追加の現象が許可されていなかったからのようだ。
うーん、とてもややこしい。
「でも……」
なぜだろうか、『白い月』とやらはコピーができていない。分析どころか、コピーしてすらないのだ。
ラリルくんの『オール・アバウト・イット』と同じなのだろうか。それにしては、『マイ・アメイジング・ワールド』は普通にコピーできていたのが引っかかるし。
「もう考え事は済んだ」
「うん。これ以上は分かんないから」
どうやら考える時間を与えてくれていたらしい。ずいぶんとなめられたものだが、固有魔法のコピーを制限されている僕ではあまり強くないのが現実というものか。
しろの周囲に青い雷がバチバチと出現し、それが矢の形を成す。
「『スペシャルズ』!」
とっさに『スペシャルズ』で金属の壁を生成し、地面に刺すことで飛んできた電気が地面へ逃げた。当然かなりの熱で壁が溶けたが、降りかかってくる前に共通点を口に出して消し去る。
そして僕が水の槍で反撃を仕掛けようとした瞬間。
「『スペシャルズ』、焼夷、クラスタ、デイジーカッター」
「な――!?」
しろの背後に生成された三つの大きな爆弾。それが僕へ向かって飛んできた!
なぜコピーできる。なぜこの世界にないはずの兵器を知っているんだ!?
「……!」
僕の頭が半ばパニックになる。あの威力は、僕の結界でもろくに防げない。
じゃあ、負けるのか。それは嫌だ。
ならば……
「カット!」
「!」
相手がコピーしてきたのならこっちだってコピーしてもいいはずだ! そう考えた僕は即座にクェドの『ディレクターズ・カット』で爆弾を消し去る。
「出し惜しみはしないよっ! 『マイ・アメイジング・ワールド』っ!」
「『白い月』!」
僕が出現させた月をしろへ向かって飛ばすことで強制的に視界へぶち込む。
そのまま魔法の効果でしろの状況を編集して適当なダメージを付与した。
「がっ!」
相手の『白い月』がまだよく分らないので、相手に隙を与えずに攻撃を続ける。
魔法の使い方はかなり難しかったものの、自分の未来を編集して自分を『マイ・アメイジング・ワールド』のプロにすることで対処する。見違えるほどに魔法の行使効率が上がった。
「ぐっ……せいっ!」
苦し紛れにしろが飛ばした鋼の大きな矢のようなものも、すぐに叩き潰す。
バグを起こしたシューティングゲームの敵のように猛烈な勢いでダメージを受けているしろ。まるで空中に浮いたまま痙攣をおこしているみたいだ。
ダメージを受けても次のダメージで吹っ飛ぶことができず、結果としてその空中にとどまったままぼこぼこになっている。
「さあ、終わろうか。『エクスプロージョン・ラグナロク』――」
僕の背後に膨大な魔力が出現し、だんだんと固まっていく。
「『アロー』」
爆発力という概念を矢の形に変えたそれは、光の速度でしろへと飛んでいき――いともたやすく、しろを木っ端みじんに粉砕した。




