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女友達に付き合ったら人生が暗転した  作者: 北見晶


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7/12

まさか……娶れ……とか?


 自宅謹慎を命じられて三日後、マグシットは庭で準備運動をしていた。

 外出は禁止されているが、自宅の敷地内なら大丈夫だろう。そう判断して。

 空は曇っているが、日差しが強くないのと涼しいのはありがたい。身体が軽くなった気がする。

 筋肉をほぐしたら、次は素振り。自画自賛かもしれないが、鋭い風切り音を生んだのは気のせいでないと信じたい。


 腕がだるくなったところで、休憩をとる。謹慎が解けたら、嫌でも研鑽三昧の日々がおとずれるのだから、開き直って休むのもいいかもしれない。

 しかし、騎士科の授業を刷り込まれた肉体は、理由なき怠惰をよしとしなかった。

 故に、鍛練に励むのみ。


 そういえば-ー

 ウォーエズ子爵令息は、ピピエ男爵令嬢のことをぼんやり考えた。

 自宅謹慎前喚いていた女子のことを。

 あれに親しみを覚えた自分を殴りたくなる。人懐っこかったのではない。無礼なだけであった。


 冷静に分析すれば、婚約者にベタベタする異性に苦言を呈するのは当たり前だし、爵位が下の者が上の者に対して敬語を使わないなんて、余程の例外でない限りあり得ない。

 

 頭の中が愚痴で満たされたマグシットだが、意識の余白がある仮説を形成した。

 ホリーネアを鬱陶しいと判じ、おとなしくさせるために婚約解消書を行使したあの時、ハッタリとはいえ「俺はカロンナを選ぶ」と宣言したら、どうなっていただろうか?


 絶対彼女は飛びついていたに決まっている。


 静穏の吐息が大気に溶ける。状況は好転してはいないが、少なくとも最悪の事態は免れていた今に。


 体力が回復したところで、素振りの再開を決めるマグシット。


 すると、執事がこちらにやって来た。


「マグシット様。ピピエ男爵家のカロンナと名乗る女が来たのですが、いかがなさいますか?」


 一瞬、ウォーエズ子爵令息は発言内容を脳が拒否した。

 念のため外見を質問したら、本人だと判明。

 追い返すのは簡単だが、あのふてぶてしい女のことだから、玄関に居座る可能性も鎮座している。

 なので、原因不明の腹痛でトイレにこもっていると伝えるよう、命じた。


 すかさず自室に戻るマグシット。現在地は裏庭だが、図々しいカロンナなら、侵入して回り込んでも不思議ではないため。


 幸いピピエ男爵令嬢は引き下がったが、疑問が残る。

 なぜわざわざ自宅謹慎中なのにウォーエズ子爵家を訪れたのか。

 悪い部分で行動力はあるが、嫌なことや自分にメリットのなさそうな事柄に働きかけるはずがない。

 逆に考えれば、何らかの旨味を嗅ぎ取ったわけだ。


 まさか……娶れ……とか? 

 

 地獄から這い出た案に、震え上がる。

 そんなのは、真っ平御免だ。

 今度来たら水ぶっかけてやる。

 マグシットは心に決めた。




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