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放課後の来訪者

 放課後の教室は、少しざわついていた。


 理由は単純。


 廊下が、やけに騒がしい。


「……何かあったの?」


 隣の席のひなたが、ひそひそ声で言う。


「知らないけど、人だかりできてる」


 その時だった。


 教室の入口に、

 見慣れない人影が立つ。


 ――いや。


 見慣れていない、というより。


「……派手」


 思わず、声が漏れた。


 布の重なり方。

 色使い。

 どう見ても、普通の服じゃない。


 どこかコスプレっぽい。


 でも、似合っている。


 教室の空気が、一瞬で変わった。


「恒一」


 師姉の声。


 名前を呼ばれて、恒一が顔を上げる。


「……師姉?」


 クラス中の視線が、集まる。


 その中で、一番分かりやすく反応したのは――亮だった。


「……」


 完全に、固まっている。


 口が半開き。


 視線が、師姉から離れない。


 あ、これは。


 一目惚れだ。


「迎えに来たわけじゃないわよ」


 師姉は、さらっと言う。


「ちょっと用事があっただけ」


「ここ、学校だけど」


「知ってる」


 知ってて来てる。


 その態度が、もう師姉だった。


 ざわめきが広がる。


「誰?」


「立花君の知り合い?」


「モデル?」


 その空気を、切り裂くように。


 廊下の奥から、別の気配が近づいてきた。


 今度は――


 静かで、澄んでいて。


 でも、はっきりと異質。


 教室の入口に現れたのは、

 儚げな雰囲気の少女。


 昨日の朝、

 クラスメイトが噂していた姿。


「……来た」


 誰かが、小声で言う。


 清磬だった。


 視線が、迷いなく恒一を捉える。


「天風立華」


 教室の空気が、ぴしりと固まる。


 その呼び方が、あまりにも浮いていた。


「迎えに来た」


 淡々とした声。


 感情は薄い。


 でも、距離は近い。


 恒一のすぐ隣に立つ。


 肩が、触れそうなほど。


 ――昨日、私が見た光景。


 それが、

 教室という日常の中で、

 再現される。


 胸の奥が、きゅっと縮む。


「……ズルい」


 誰にも聞こえない声。


 でも、確かに思った。


 ざわめきが、一段大きくなる。


「え、同一人物?」


「立花君って、何者?」


「可愛い子、二人も……」


 噂が、噂でなくなる瞬間。


 亮は、完全に魂が抜けていた。


 師姉はそれを見て、少しだけ笑う。


「相変わらずね」


 何が、とは言わない。


 でも、全部分かっている顔。


 私は、その場に立ったまま、動けなかった。


 恒一の隣。


 そこに立つのが、

 当たり前みたいな二人。


 私は、まだ。


 その輪の外にいる。


 その事実が、

 胸に、静かに刺さっていた。

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