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地仙譚~百年を生きる仙人は現代で怪異を祓う~  作者: taka
第13章 見られている夜
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師姉の善意(※善意)

「……その格好で外に出る気?」


 師姉の声は、いつも通り淡々としていた。


 でも、視線の先ははっきりしている。


 清磬。


 正装。

 完全な仙洞仕様。


 夜の住宅街に出たら、十秒で職質されそうな格好。


「問題があるのか?」


 清磬は本気で分かっていない顔をしていた。


「あるわよ」


 師姉は即答した。


「それ、現代日本では

 “変な宗教”か“撮影中”のどっちかよ」


 恒一が一瞬考えて、静かに頷く。


「……まずいな」


「?」


 清磬は首を傾げた。


「視線が集まる」


 師姉が補足する。


「調査どころじゃなくなるわ」


「なるほど」


 清磬は納得した様子だった。


「では、着替えが必要だな」


 そう言った直後。


 師姉が、奥の部屋から何かを持ってきた。


「じゃあ、これ」


 テーブルに置かれたそれを見て、恒一の動きが止まる。


「……待て」


 師姉は無視した。


「人間社会用。

 ちゃんと今風よ?」


 今風、という言葉に一抹の不安を覚える。


 清磬は、迷いなくそれを手に取った。


「動きやすそうだ」


「そうでしょ?」


「視線は減るか?」


「……別方向に集まるわね」


 恒一が、低く言う。


「師姉」


「何?」


「それは違う」


 珍しく、即座の否定だった。


「このまま外に出たら、

 警察とは別の意味で問題になる」


 師姉は、少しだけ考える。


「……じゃあ、これは?」


 二着目。


 今度は少し落ち着いた色合い。


 でも、細部が妙に凝っている。


 清磬は、それもすんなり受け取った。


「比較すると、こちらの方が合理的だな」


「そうそう」


 師姉は満足そうだ。


 恒一は、額に手を当てた。


「……私が選ぶ」


 その一言で、場の空気が変わる。


「任せる」


 清磬は即答だった。


 不満も、疑問もない。


 ただ、信頼だけ。


 数分後。


 清磬は、かなり普通の服装になって戻ってきた。


 夜の街に溶け込む、違和感のない格好。


「どうだ?」


 恒一が尋ねる。


「問題ない」


 清磬は頷く。


「視線は感じない。

 動きやすい。

 合理的だ」


 師姉は、少し残念そうだった。


「つまらないわね」


「それでいい」


 恒一は即答した。


 私は、その様子を見ていた。


 清磬は、着替えを拒まなかった。


 疑いもしなかった。


 ただ、言われた通りに受け入れた。


 それが、

 甘えなのか、信頼なのか。


 本人には、まだ分からないんだと思う。

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