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――遅れてくる波
その夜。
佐倉由紀は、自室のベッドに腰を下ろし、天井を見つめていた。
「……」
職員室での出来事が、
今になって、頭の中で再生される。
あの人の言葉。
視線。
距離感。
そして――
「声、通るわね」
胸の奥が、ざわりとする。
思い出すたび、
なぜか背筋が伸びる。
無意識に、姿勢を正している自分に気づき、
はっとする。
「……何だったんだろう」
分からない。
でも。
嫌ではない。
むしろ――
長い間、
見ないふりをしてきた何かを、
正面から見られた気がしていた。
スマートフォンが、震える。
メッセージは、見慣れない番号。
『今度、時間ある?
ちょっとだけよ』
「……」
佐倉は、画面を見つめたまま、
小さく息を吸った。
そして。
「……少しだけなら」
そう、打ち込んでいた。




