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気づく者
居間に戻ると、穂乃香はまだ起きていた。
膝を抱え、考え込んでいる。
「……私」
恒一に気づき、視線を上げる。
「何か、できることはありますか」
問いかけは、恐る恐るだった。
自分が、守られるだけの存在で終わることに、小さな違和感を覚え始めている。
恒一は、すぐには答えなかった。
少し考え、ゆっくりと言う。
「あります」
穂乃香の目が、見開かれる。
「君は、“境界”に気づける。それは、誰にでもできることではありません」
無理に何かをしなくていい、と前置きをしてから、続ける。
「ただ、
違和感を、違和感として伝えて下さい」
「怖かったら、怖いと」
「嫌だったら、嫌だと」
穂乃香は、その言葉を噛み締める。
「……それだけで、いいんですか?」
「それだけで、十分です」
萃華が、横から口を挟む。
「それが出来ない大人が、
どれだけいると思ってんの」
そして、にっと笑う。
「穂乃香ちゃんはね」
「もう、
立派な当事者よ」
その言葉に、穂乃香の胸が、少しだけ熱くなった。
守られる側から、巻き込まれた被害者から。
——気づく者へ。
ゆっくりと、立ち位置が変わっていくのを感じていた。




