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地仙譚~百年を生きる仙人は現代で怪異を祓う~  作者: taka
第24章 同じ教室、違う世界
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夕暮れの気配

放課後。


校舎の窓から差し込む夕陽が、廊下を長く染めていた。


教室ではまだ何人かが残っていて、

文化祭の話や、部活の予定で騒いでいる。


穂乃香は鞄を肩に掛けると、席を立った。


「もう帰るの?」


ひなたが声をかける。


「うん」


「部活ない日って暇じゃない?」


「慣れてる」


穂乃香がそう言うと、ひなたは少し笑った。


「そっか。穂乃香、いつもそんな感じだもんね」


言葉は軽い。


けれど、そこに悪意はない。


ただの雑談。


ただの友達同士の会話。


「じゃあまた明日」


「うん、またね」


穂乃香は小さく手を振り、教室を出た。


廊下には夕方の静けさが広がっている。


部活へ向かう生徒の足音。

遠くで響くボールの音。


階段を降り、校門を出る。


空はもう、夕暮れの色になっていた。


通学路を歩く人の数も、朝よりずっと少ない。


穂乃香はゆっくりと歩きながら、ふと空を見上げた。


赤く染まる雲。


静かな風。


(……今日は変な一日だったな)


朝から続く違和感。


人の気配。

教室の空気。

感情の色のようなもの。


まだはっきりとは分からない。


ただ――


昨日までとは、何かが少し違う。


その時だった。


ふと、背中に冷たい感覚が走った。


穂乃香は足を止める。


振り返る。


通学路には誰もいない。


夕方の住宅街。


自転車が一台通り過ぎ、

遠くで犬が吠える声が聞こえるだけ。


(……今のは)


気のせい。


そう思おうとした。


けれど。


ほんの一瞬だけ。


空気の奥に、

濁った気配のようなものがあった気がした。


昨日、地下で感じたものとは違う。


もっと、重い。


もっと、冷たい。


穂乃香はしばらくその場に立っていた。


けれど、その気配はもう消えている。


ただの夕方の通学路。


静かな住宅街。


(……疲れてるのかな)


穂乃香は小さく息を吐いた。


そして再び歩き出す。


その背中を――


遠くの電柱の影から、

何かが静かに見ていた。


人の形をしている。


だが、人の気配ではない。


影はゆっくりと首を傾げた。


そして低く呟く。


「……なるほど」


夕暮れの風に溶ける声。


「見鬼持ちか」


影は笑う。


静かに。


愉快そうに。


「面白い」


その視線は、

遠ざかる穂乃香ではなく――


もっと奥。


まだ姿を見せていない、

別の気配を探していた。


「天風立華」


その名を、影は知っていた。


そして。


夕暮れの通学路には、

もう誰もいなかった。

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