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鎮魂の残響
誰も、すぐには口を開かなかった。
焼けた路地の奥で、夜の熱だけがまだ遅れて残っている。
けれど、その上を撫でる風はもう静かだった。
恒一が歩き出す。
清磬も、その後に続く。
穂乃香は少し遅れて足を動かした。
表通りへ戻れば、街は何事もなかったように明るい。
笑い声も、ネオンの色も、さっきまでと変わらない。
なのに、自分だけが別のものを見てしまった気がした。
邪仙の火。
魂を焼く炎。
そして、その後に鳴った磬の音。
胸の奥に残っているのは、恐怖だけではない。
言葉にできないまま、穂乃香は小さく息を吸う。
夜のざわめきの底で、
鎮魂の響きだけが、まだ消えずに残っていた。




