即興の練習は即興
まず、私以外のみんなが合わせて弾いた。
うん、すごいね。
ジャズのようなクラシックのような、現代音楽のような…でもやっぱりタンゴだった。進化したタンゴって感じの曲だ。
ピアソラは聴いたことがなかったが、多分すごい人なんだろう。で、ジョンさんもすごいのだろう。
みんなは、調整しながら何度か通して弾いていた。すると
「じゃあ、トミヤさんも入ってください。」
ジョンさんに言われる。
私は始めから同じステージに立って楽器はセットはしているものの、いや、なんかもう私以外のジョンさん、コナー、エヴァンさん、桃の4人でいいんじゃないかと思っていた。
が、マレットを持った。
曲が始まる。
ノブさんが客席で見ているが、なぜかAIだと思うと緊張しなかった。
ジョンさんはバイオリンを弾いている。彼の目線がこちらに来るのを待つ。
来た。
ポーーーーーン
いいのか?えっ、!まだ見てる?じゃ、また叩くよ?
ポーーーーーン
目が逸らされる。
分かんないなーコレ。みんなのは練習だと思うけど、私のはカンであって練習なんだろうか…ってあっまたこっち見た。
ポーーーーーン
え?…分からん。
………
………
またこっち見た。
ポーーーーーン
まだ見てる。
ポポーーーーーン
あっ2回叩いちゃった。
………
……………………
………………………
また見た
ポーーーーーン
曲が終わった。
すると、観客席の方から拍手が聞こえた。
「コレです。エビハラが求めていたのはコレです。」
そう言ってノブさんは立ち上がり手を叩いている。
うん、ありがとう。やっぱりエビハラさんの趣味が謎すぎるが、秘書さんが言うならコレなんだろう。
でもジョンさんは納得してない感じだった。
明らかに最後のタンドラム音はズレてるし、まあ私もそう思います。
「ノブさん。ボクは分からないです。何で上手くてはいけないんですか?」
彼はそう言った。
「それは先日もお話しいたしましたが、この時代だからでございます。」
ノブさんは返答し、続けた。
「私や桃さんのようなAIはほぼ完璧に演奏出来ますし、宇宙人の皆さんもとてもお上手です。ジョンさんも最上級のプロでしょう。
しかし、全て出来て当たり前の世界にはわざとではない、つたなさが不足しているのです。
トミヤさんはそれが可能な方です。」
多分子供の絵みたいな感じなのだろう。
彼らもわざとそう描いてるわけではない。
「ただもう一つ可能でしたら、ここからさらに楽しんで弾いて頂けたらより素敵だと存じます。」
そう、ノブさんは言った。
その日はそれで解散となった。




