練習はしない
とりあえず楽譜を読んで練習することになった。
みんなですると音が混じり合って分からなくなるので、このホールで練習するのはエヴァンさんだけ、他の人は近くの個室で練習することになる。
そして、各箇所をジョンさんがまわって教えるという感じだ。
私は即興なので練習はしないが、彼と一緒にまわって感覚を掴んで欲しいと言われた。
コナーの練習風景をジョンさんと見に行く。
スタインウェイらしきピアノの足に、台みたいな物を設置して、高さを上げている。
そして普通のピアノのイスより高いイスに座って弾いていた。
それはそうか、コナーの身長だとそのくらいしないと弾きづらいと思う。
そして、とてもうまい。
ピアノをかじってたので、凄さは少し分かるかもしれない。
そんなことを思いながら指導を聞いていたら、部屋に新たに入って来る人がいた。
知らない人だ。
その人は私に軽く会釈をして隣に置いてあるイスに座った。
ぱっと見、日本人。だけどものすごくがっしりした体型で、筋肉質の男性だ。
年齢は20代中頃だろうか?身長は平均くらい。グレーの上下のスーツに同じ色のベストを着ている。
誰か分からない人が隣りにいるとちょっと緊張する。
そんなことを思いながら見ていたら、終わったらしく、ジョンさんがこちらを振り返った。
「あっノブさんいたんですか。」
「お世話になっております。ジョンさん、進捗はいかがですか?」
そのノブと言う人は会釈をして立ち上がり、ジョンさんと話している。
「トミヤさん、この人はノブさんです。」
そうジョンさんに紹介され、私も立ち上がった。
「初めまして、トミヤです。」
「ノブと申します。エビハラのAIで秘書などをしております。本日は皆様の状況の確認と楽器の調整をしに参りました。」
ノブさんはエビハラさんの関係者らしく、軽く笑顔になってそう話した。
日本人に見えたがAIだった。
たまに思うが、この世界は人間よりAIの方がもう多いのだと思う。
今度はノブさんと3人で桃の所へ行った。
桃はさすがAIという感じで、楽譜を読み込んで全部弾けるようになっていた。
彼女の楽器バンドネオンは音の圧というかインパクトが強い。やはりアコーディオンに似た音がするが、もっとしなやかで小回りが効く感じだ。
おそらくこの曲のメインはこの楽器なのだろうと思う。メロディーも主旋律っぽい。
「桃すごいね。」
私が近寄ってそう褒めると、彼女はとても嬉しそうにパアッと笑った。
そしてよくは分からないが、楽譜のどこそこがと、ジョンさんの指導が入る。
それをおそらく理解してるノブさんは2人をジッと観察していた。
次はエヴァンさんの所だ。
ホールに3人で戻ると、大きな重低音が響いていた。
太鼓は空中に縦にセットできるような脚立で固定され、それを手で叩いている。
ホールなのと、力が強いので身体中がビリビリする。内臓も揺れてる。
彼へ指導が入り、もっと弱い音に変更するようだった。
そして、さすがみんな覚えがよく、その1時間後、ホールで音を合わせることになった。




