その33
仕事の間も片時もリジーの方が忘れられないシュナイダーは、これまでの2人のことを考えていた。
リジーははじめはただの警護対象の1人だった。多少気持ちがあったことはわかってはいた事だ。
だが、忘れる事なく警護ができたと思っている。
その間にいろんな彼女の素顔を覗き見る事で気持ちは膨らんでいった。
同僚にはからかわれたりもしたが、気持ちはぶれなかった。
彼女に恋してると気づいたのは警護していた時だった。武装した車に轢かれそうになった時、頭が沸騰して我を忘れそうになった時だ。
それからはそばに居られるときはそばにいるようにした。
誰に何を言われても気にならない。
恋は盲目とはよく言ったものだ。
「おい、行くぞ!」
「ああ。分かった。すぐ行く。」
気持ちを切り替えて仕事モードになる。
今日は地方への議員移動の護衛だ。
車での移動及び、途中で新幹線に乗り込む。
気が抜けない瞬間だ。
「A班、先回りして危険物がないか調べてくれ。」
「A班了解。」
「B班、警護対象に問題はないな?」
「B班、問題ありません。」
「B班は引き続き警護を。」
「B班了解。ですが、狙って来る奴等はいるんですかねぇ〜?」
「馬鹿か。常に目を光らせて置かないでどうする?いついかなる時もだ。」
「了解。」
シュナイダーは装備を確認し、警護対象のそばを離れない。狙撃という可能性も捨てきれないのだ。
以前、そう言う場面に遭遇したこともあり、気が休まることはない。
その日の警護は問題なく過ぎ、仕事を終えた仲間とともに部署に戻る。
警護部品を外し、身軽になることで警護が無事終わったと実感する。
さぁ、これからどうしようか?
仲間達はいっぱいひっかけに行くというが、シュナイダーは気分ではなかった為断って帰宅の途に着く。
部屋には必要最低限のものしか置かなくなったのはいつからだろうか?
それでいいと考えていたが、今はそうではない。
リジーの存在が自分を変えつつあるのは実感しているつもりだ。
リジーは今頃何をしているのだろうか?
また創作に没頭しているのか?
食事はちゃんと取れているか?などと保護者になった気分だ。
思わず苦笑いをしているシュナイダーは、リジーに電話をかけることにした。
「やあ、こんばんわ。久しぶりだね。また創作してるのかい?」
「ええ、そうなのよ。良いアイデアが浮かんだから今作成している最中よ。」
「実は今日は定時で終わったから夕ご飯を誘いに電話したんだが…どうかな?」
「え?夕ご飯?あらやだ、私ったらお昼ご飯もまだだわ。道理でお腹ペコペコなんだわ。」
「じゃあ食べに行くかい?」
「ええ、どこが良い?私あんまりお店に詳しくなくて。あなたが行きたい場所でいいわよ。」
「分かった。じゃあ、10分後にそっちに行くよ。」
「10分後ね。」
リジーは急いで道具を片付け始めた。
あんまり時間がないからだ。
手についた汚れは洗えば落ちるし、エプロンをしていたから服は汚れてはいない。だから大丈夫。
そうこうしているうちにブザーが鳴ってシュナイダーが来たのを知らせる。
「早かったのね。近くにいたの?」
「ああ、今日はこっち方面での仕事だったからね。仲間とは現地で解散してきた。…にしてもすごい匂いだな…。」
「いやだ!臭う?」
「いや、大した匂いじゃない。じゃあ、行けるかい?」
「ええ、行きましょう。」
部屋に鍵をかけて2人は店を出た。
行こうとしていた店はリジーの店からそお遠くない場所にあった。
その店には個室があって、他の人からは見えない作りとなっていた。今の姿を人に見られるなんてと思っていたからありがたい。ただ場違いじゃないかとは思っていた。
「どうしたんだい?緊張してる?」
「当たり前じゃない。これで緊張してなかったらどうかしてるわ。私の格好変じゃない?臭わない?」
「大丈夫だよ。匂わない。さっきはあの部屋にいたから匂ったんだ。今は匂わないよ。」
シュナイダーは何が食べたいと聞くけど、こういうお店に来たことがなかったのでお任せすることにした。
好き嫌いはないから大丈夫なのよね〜。




