62 魔の森のくまさん。
シャランは満身創痍であった。
いや、目立った外傷はない。
そういう意味では目の前の相手の方が酷いであろう。
先程から、隙を突く形で、強力な一撃を与え続けているのだから。
しかし、目の前の相手は操られているだけの物に対し、こちらは何をするのにも体力が居る。
ましてや、目の前の相手は巨体過ぎた。
攻撃にしろ、防御にしろ一々体力を食う。
全身から汗が吹き出し、息が荒れ、頭痛までしてきた。
何とか、立っている、構えているという状態であった。
実力者として有名なシャランですら、ほんの一、二時間でこの有様であった。
「ふむ、なかなか、これはいよいよピンチと言うやつかな。」
そう呟く。
確かにピンチには違いない。
しかし、魔王と戦った時ほど、危機感は抱かなかった。
なんだかんだと言って、シャランはラーシャンの事を信頼していた。
「ふむ、間に合ったか。」
知った気配がビックベアーの後方から近づいてくる。
後一撃は囮として受けた方が良いだろうと思い、ビックベアーの前に立つ。
根性と気合で何とか、ビックベアーの繰り出した前足での一撃を大剣で受け、押し合いの形に持って行った。
しかし、先ほどの押し合いとは違うのは、もうシャランに弾き飛ばすだけの体力がなかったことだ。
だが、何の問題もなかった。
何故なら、その体勢こそ望んだ形であり、これでビックベアーは不用意に動くわけにはいかなくなった。
立ち上がらないと言う事は、四肢でもって歩き回ると言う事は、腹が弱点なのだろう。
もし、このまま不用意に振り向けば、シャランの大剣が腹を切り裂く。
それぐらいはできる。
だが、それも必要ないだろう。
ラーシャンがビックベアーのすぐ後ろ、もう目視できる距離を走ってきており、そのままビックベアーの背を蹴って駆け上っていく。
「イヤリング落としましたよ。私が点けてあげますわ。」
そう言って手に持った、蔦と二つに割れた金ダライで作った不格好な目隠しをビックベアーに被せた。
「さぁ、踊りましょうか!?貴方の破滅の踊りを。」
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