61 囮と罠。
今、シャランは、ラーシャンとは少々離れた開けた場所でビックベアーと相対していた。
シャランの見たてた通りに、ビックベアーの視界を利用して外界の情報を得ているようだ。
シャランが後方へ、木々の影を利用して回り込むと、キョロキョロと辺りを見回し、シャランを探す。 シャランが、視界に入り、視界からほんの少し外れるだけで、顔をシャランの方へと向けた。
「ふむ、そんなに広くはないようだ。」
視界は、ビックベアーのモノよりも狭い。
これは、操者が中に入っている為、操者本来の視界と、ビックベアーの視界が合って居ない為である。
シャランはそれを確認次第、後方へ回り込み、頭の部分が此方を向いた瞬間を狙って武器を振り下ろす。
ガツンッと鈍い音がして、手の感触は確実に仕留めていると感じさせる。
しかし、やはり操られているだけなので、全く動じずにシャランに反撃してきた。
「ぐぅ、……この!」
振り下ろされた前足の攻撃を、大剣の腹で受け、そのまま押し合いの形になる。
流石の体格差に押し込まれそうになるものの、身体強化の魔法を駆使して、逆に弾き飛ばした。
「当たるが、ダメージまで行かないか。」
相手は死体なのだ。こちらの攻撃は幾ら当てたところで、ダメージとはならない。
後は、ラーシャンに授けた策が成功するのを祈って、ビックベアーを此処に縛り付けるのみ。
ラーシャンは今、蔦等を掻き集めていた。
一本では臨んだ長さまで足りないのなら、数本を纏めればいい。
「長さはどうにかなりましたが、道具が足りない。ああ、もう、どうしろっていうんですか。」
蔦の方は如何にかなった。一番必要な、締めの方も、彼方此方に散乱している。しかし、この作戦を完遂するために必要な物が見つからないのだ。
思わず叫んでしまい、慌てて口を塞ぐ。
何かないかと、周りを見渡した時、真っ二つに折れた自身の武器が目に入った。
「これです!」
天の采配かと思わず思ってしまったほど、ぴったりの大きさと数であった。
「待っていてください、お姉様。」
囮となっているシャランの事を思いラーシャンは急いで必要な物を作成していく。
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