59 シャランの考察、ラーシャンの踊り。
操られてから、ビックベアーに本能による追撃は無くなった。
ただし、思考して攻撃を繰り出してくる。まるで人のように。
「ふむ、何処にいる?」
シャランは小さく呟いた。
木々の中に紛れ、左右を見渡す。
どうも、使われたのはマリオネッターと呼ばれる魔法で、死体や人形を糸で操るように動かす魔法。
ただこの魔法は、ある程度近づかないと、発動しない。
つまりは術者はこの近くに潜んでいるはずだった。
「ふむ、奴の気配しかしない。」
シャランと言う実力者が本気で気配を探れば、それこそ自身よりも強者であり且つ、隠密系統に特化した存在でなければ隠すことなどできない。
何故なら、シャランは冒険者という気配を探ることに特化した職業についている。
その上で、冒険者随一と言われるまで鍛えてあるのだ。
そんなシャランが気配を感じられるのは、見下ろした先に居る四肢で歩くビックベアー位なものだ。
今、シャランは一層高くなっている大木の枝に伏せる形で隠れていた。
此処からなら見渡しやすく、またバレタ時は囮の代わりになる。
だが、ビックベアーはキョロキョロと左右を見渡し、木々の中を行ったり来たりするだけ。
それは、この場所に気付いていないだけと言えるのだが。
「…ふむ、試してみるか。」
シャランは少し思いついた事を試す事にした。
シャランは無防備に枝の上で立ち上がった。
この森を見渡せる場所に。
森が見渡せると言う事は、逆に何処からでも見えると言う事。
この側に術者が居るのなら、シャランを見つけ、ビックベアーを嗾ける筈。
だが、ビックベアーはウロウロとするのみ。まだ見つけられていない事を考慮に入れて、その場で暫くじっと佇んだ後、その場から飛び降りた。
知った気配が少し離れた場所で何かをしている事を知っていて、その場を目指した。
「…ふむ、お前は何をしているんだ?」
「お姉様!!」
ラーシャンは真っ二つに割れた金ダライを両手に持ち、振り回していた。
流石のシャランと言えど、割れた金ダライを両手に持って怪しい踊りを踊る義妹の様子に少々困惑した様子を見せる。
ラーシャンもラーシャンで何かバツの悪そうな顔で固まった。
その場を静寂が支配した。
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