57 ラーシャンの冒険8
「っ、まずい!」
思わず呟いた言葉が外に出た。
それを、好機と見たのか、いや、本能で相手が弱った瞬間を悟ったのだろうビックベアーがラーシャンに襲いかかった。
「ぐっ、…この!」
前足での一撃を避けるも、掠ったのか脇腹下の一部が裂ける。
何とか、伸ばしていた腕に拳で一撃を加えるも、ほとんど効いてはいない。
それどころか、自分の拳を痛めてしまった。
「ふぅ、なんとか凌ぐのが精一杯か。」
逃げることも考慮に入れて、しかし後ろから襲われないようにビックベアーと目は合わせたまま、少しづつ後ろに下がる。
瞬間、ビックベアーが再びラーシャンの方に跳びこんできた。
「チャンスっ!」
その好機を見逃さず、すぐさま後方へ跳び退ると、二度三度と更に引き離す。
木々の中にドンドン突き進み、何とかビックベアーから逃げ切れたと思った。
突然、轟音と共にビックベアーが横に現れるまでは。
「…そういえば、それがありましたわ。」
ビックベアーが両手を広げ、後ろ脚に力を込めて前方へと跳んだのだろう。
巨体を生かした一切の障害物を無視した体当たりである。
真横に来たビックベアーの目とあった。
ビックベアーは喜色の色を浮かばせる。
牙を見せ、涎を垂らし獰猛に笑った。
「ふむ、これがピンチというものか。」
「へっ!?」
ラーシャンが観念したと見たのか、口を開けて噛付きにきたビックベアー。
諦めるものかと最後まで目を開いていたラーシャンに影が覆う。
聞きなれた声で、自信満々に何処かズレタ呑気な言葉を呟きつつビックベアーの噛付きを、その自身の身長よりも大きい大剣で防ぎつつ、シャランがラーシャンを見ていた。
「ふむ、中々にデカイな。」
ギロリと擬音が付きそうな眼光でビックベアーを睨み付ける。
本能に従い跳び退るビックベアー。
「お姉様?」
「ふむ。他に誰に見える?」
ラーシャンの呟いた言葉に、やはりズレタ回答を返してきた。
それはやはりシャランだった。
シャランが間に合ったのだった。
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