55 ラーシャンの冒険6
「これは少し不味いわね。」
ラーシャンの目的は、目の前のビックベアーであったが、此処まで大きいとは聞いていなかった。
何よりラーシャンは貴族令嬢、良くも悪くも箱入り娘であった。
冒険者なら、親や知り合いから教わる、ビックベアーの確立された対処法を知っているが、当然ラーシャンは知る由もなかった。
ラーシャンはビックベアーを見上げる。
ビックベアーと目があった気がした。
と思ったら、ビックベアーは後ろ脚だけで立ちだした。
グングン高さが上がり、周りの木々が、ビックベアーの短い後ろ脚ぐらいまでしかなくなる。
「……少し、これはでか過ぎじゃないでしょうか。」
ラーシャンはそう現状を呟いたのだった。
ラーシャンの呟きに反応したわけではないが、ビックベアーが咆哮を上げた。
後、後ろ脚を屈める。前へと跳び出せる様に。
当然、その巨体を支える足のバネは強靭であり、その巨体の為、空気抵抗は大きいだろうが、そんなもの無いかのように両手を広げて、ラーシャンの方へと急速に近づいてきた。
木々と岩を隠れ蓑にし、瞬時に後方横に跳びこむ。
轟音が過ぎて行った。
隣を見ると、岩は粉砕され木々は軒並み、その巨体の通った形に倒されていた。
もし、あの中に隠れていれば、今頃はあの木々のように潰されていただろう。
今になってラーシャンは少し後悔していた。
しかし、ラーシャンは染み付いた貴族根性をだす。
利き手たる右手に、武器を握る。
「さぁ、かかってきなさい。」
勇ましくそういうが、右手に持った金ダライが台無しにしていた。
再び、ビックベアーが現れた。そして、またもや後ろ脚で立ち、屈み出す。
ラーシャンは出来る限りの速度で後方に回り、膝の後ろの部分を金ダライの縁でブッ叩いた。
当然耐えられず、前へとこけるビックベアー。
更に、今度は前側へと移動し、下からビックベアーの顎を目掛けて振り上げた。
「ガフッ、ぐるるるる…。」
「あら、怒らせてしまいましたか。」
ビックベアーが四足で襲いかかる。二本脚で立ってから屈み、跳びかかる程のパワーは出ないが、それでもスピードは上がっていた。
ビックベアーの前足がラーシャンを襲った。
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