53 駆け込む冒険者、慌てるシャラン。
町の中を西側から東側に走る大柄な影があった。
いや、その巨体に見合わない速さで駆け抜ける為、影と評しただけで、冒険者である。
彼は今、ギルドからの要請を受けて、ある人物を探していた。
この町一番の実力冒険者であるシャランに伝えなければいけないことがある。
それも緊急を要するものだ。
息が荒れ、心臓が早鐘を打つが、そんなものは関係なかった。
男が急ぐことによって、人一人の命が助かるかもしれないのだ。
荒くれ者で通っている自分でも、冒険者なのだ。
他の冒険者を助けておけば、何時か自分が危機に陥った時に助けてくれるかもしれない。そんな思いで、冒険者達は互いに助け合う。
彼もまたそんな思いで走っているのだ。
例え金ダライで気絶させられたとしても、Dランカーのビルドは、宿屋《魔王城》目掛けて突き進んだ。
「シャランさんは居るかっ!」
扉を蹴破る程の勢いで、入ってきたビルドは、開閉一番にそう叫んだ。
「ふむ、何かあったのか?」
カウンター側の机の上に置かれた山の様なお見合い写真を、興味なさそうな顔で嫌々見ていたシャランは、息も絶え絶えなビルドに顔を向ける。
「大変なんだ。20メートル級のビックベアーが見つかった!!」
「…ふむ、凄い事だと思うが、何処が大変なんだ?」
ビックベアーの大きさの更新が行われたぐらいで、目の前の男が血相をかえて駆け込んでくるほどのものではない。
ビックベアーの巨体が厄介なだけで、対処法は然りと確立されている。どちらかといえば、討伐後の対処の方が厄介な相手だ。
ビックベアーはEランクの魔物なのだ。
目の前の男ですら、然りと装備を整えれば単独でも狩れる相手なのだ。
ましてや、ギルドには目の前の男が低ランクだと言う事を除いても、それなりの実力者が詰めている。慌てている理由がない。
「新人が一人、ビックベアーを狩りに行ってんだよ。」
「ふむ、それでか。」
「ああ、俺じゃ助けられねぇ!頼む助けてくれ。」
護衛対象、もとい足手まといが居れば難易度はぐんと上がる。
ましてや、今回の件は速さが大事だった。
今からでも間に合うのはシャランしかいないだろう。
遂に土下座までしだした男に、シャランは、一つ頷く。
「ふむ、よかろう。」
タダと言うわけじゃないのだろう。そう冗談めかして立ち上がったシャラン。
「ふむ、その新人の名前は?」
「ああ、ラーシャンと言う、金髪の女だ。」
「なんだとっ!」
先程までの余裕をなくし、男に詰め寄る。
男は、その様子の激変に怖気づいていた。
「おい、眼の色は青だったか。」
「あ、ああ、青かったぞ。後武器は金ダライだ。」
「っ!」
青い眼の金髪。武器は金ダライ、そんな世間知らずはシャランの中で思い浮かぶ人物はたった一人だった。
シャランは扉を壊す勢いで跳び出していった。
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