52 ラーシャンの冒険4
受付嬢を撃退したラーシャンは意気揚々と大通りを歩く。
ラーシャンの中にはもうシャランの悪行を暴くというのは無くなっていた。
公爵令嬢たる自分が、この町を襲う魔物をバッタバッタと倒す光景が瞼の裏で展開されてすらいた。
「ここが、西門ね。」
まだ復興すらしていないのか、とボロボロに内側から焼かれた門を見る。
駐屯兵すらいない門脇の駐屯部屋を見て、この国は大丈夫なのかと思うが、父から聞かされたこの国の防衛方針を聞き、要するにここは冒険者の休憩所みたいになっているのかと思い直す。
「最初・の・一歩。」
お気楽に、町と外の境目を跳んで越えた。
目の前に広がるのは青々とした草が広がる草原。風に吹かれて揺れる背の低い草々の背景に青いはの筈が、黒く見える程の瘴気を纏った森。そこが魔の森であった。
「そこまで暗くはないのね。」
遠目に見た時は、暗く見えたが、実際に入り込んでみると木々の間から光が差し込み、そこまで暗いとは言えなかった。
「それにしても、何処にいるのかしら。」
見渡すが、そんな聞いたような巨体なら判るはず。しかし、実際は何もいなかった。
「くまー、くまー出てこい。出てきなさい。」
少々、いやかなり浮かれ過ぎており幼児化を起こしているようだ。
突如、木々の中に小さな影、いや探している魔獣から比べればと言うだけで、そこそこの大きさを持つ。ちょうどラーシャンの腰位まである影が見え、少しずつ近づいてきた。
ラーシャンはそれに気付いたが、あえて気付かない振りをし、木々の中を進む。
影は、ある距離まで近づいた瞬間、ラーシャンが気付いていないのを確認し、背後から跳びかかった。
ゴイーンの後のガツーン。
二度ほど硬質な音が響く。
瞬時に振り向いて、振り上げていた金ダライを、目の前のオオカミの様な魔獣に連続で振り下ろした音であった。
一撃目は底の部分で頭の上から撃ち落とし、強制的に口を閉じさせる。
二撃目は横から縁の部分で強撃。
「ふむ、まずは一匹ですね。」
目の前の仕留めた魔獣を見て、ウムウムと頷くラーシャンであった。
金ダライに負けるという如何にも不名誉な負け方をした最初の犠牲者であった。
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