47 シャランの実家、大量の写真。
シャランは中央広場を抜けて、北の大通りを突き進む。正面には王城。その王城の内門が見えてきた距離で、脇に逸れた。いや、この道こそシャランの目的地に続く道なのだ。
シャランは宿屋『魔王城』からの帰り道であった。
やがて、正面に王城よりは格が落ちるが、見事としか言えない芸術品の様な豪邸が姿を現す。
目の前の建物を見ると、メイズにメイド服を着せて遊んだことなど吹き飛ぶほどに憂鬱であったが。
「ふむ、やはり入らなければならないか。」
思わずポツリと漏れた本音。
冒険者としての仕事帰りや、日数が掛かるときは、宿屋に泊るがそれ以外は目の前の建物に寝泊まりする。
この屋敷は王城からもっとも近い場所に建てられた公爵家の物。
シャランのもう一つの実家でもあった。
「おかえりなさいませ。」
ズラッと並んだメイドが腰を曲げて出迎え、一番前のメイド長が扉を開けて入ってきたシャランに挨拶をする。
「…ふむ、今回は良く撮れてるぞ。」
シャランがそういってメイド長に一つの袋を渡す。
袋の表面には、魔具印刷店キャッツと印刷されている。
「きゃぁ、メイズ様も一段とお美しくなられて。」
「あぁあ、メイド長ばっかりずるい。私たちにも見せてくださいよぉ。」
「ふむ、順番に見ればよかろう。」
「お嬢様、鼻血鼻血。」
直ぐに赤い絨毯が引かれた大広間に匹敵する玄関は女性の甲高い姦しい声で溢れた。
「お姉様、あれでは困ります。高貴なる血を持つ我が……。」
ウンザリしていた。
何時もの事なのだ。
目の前にいる義妹の苦言は。
冒険者になってからも、散々言われてきた。だが、宿屋『魔王城』に泊まるようになってからの方が頻度が遥かに高い。
何がいけないのか、シャランには判らなかった。
まぁ、判りやすく言えば嫉妬である。
何故、自分の所に帰ってきてくれないのか。
一般庶民用の安宿になど泊まるのか。
そんな思いが義妹であるラーシャンにはあったのだ。
「はぁ、…せめて、お見合い用の写真位目を通してください。」
しかし、そんなこちらの思いも知らず、軽々しく出かけていく事になんの疑問も挟まない義姉を見て、やはりこの人も王族なのだなと理解した。
そして、結婚適齢期なため、大量のお見合い写真が山ほど来ていた。それを渡したが、一切目を通さず、庶民の女装写真等を額縁に入れて飾るほど。
メイズが知れば、この屋敷ごと吹き飛ばしそうだが、シャランにとっては大事であった。
「ふむ、この男な。」
女装写真を見せながらだが、いや少女にしか見えない。を見せながらなのでなんか違和感があるが、ラーシャンはその写真を覗き込む。
「…この庶民がどうしたのです?」
何時もの姉のふざけた誤魔化しであるのならば、今日こそは許せんと意気込みながら聞く。
「隣国の、魔導大国家の現王だぞ。」
「ええええええええええぇぇぇぇぇぇ……!」
さらっと爆弾を落とした。
この姉は基本的に誤魔化そうとしたことはあるが、嘘は吐かない。
ラーシャンは頭を抱えたくなった
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