35 山登り、不穏な気配。
魔王軍の紋章が入った馬車は南東に存在する活火山の裾の広場で停車した。
「エンジ、こっちに上に続く道がある。」
「なにっ、よし行くか!」
いの一番に飛び出したのは、メイズであり、メイズが頂上に続く道を見つけたことをエンジに言うと、エンジと一緒に駆け上がり始めた。
元々、火室山は観光用に整備された火山である。
流石に、巨大な魔力を有する二人とは言え、子供をあんまり危険な場所に連れてくるわけがない。
獅子は子を千尋の谷に突き落とす等と言うが、メイズ達の場合は何食わぬ顔で谷を崩壊させそうだ。
いや、そう言う事を言いたいわけではない。これは家族サービスなのだ。父親が息子とその友達を遊びに連れて行っただけなのだ。
「誰かあるか。」
「はっ。」
「すまんが、メイズ達が行き過ぎないように注意していてくれ。
魔王は側にいた護衛の騎士にそれだけ告げて、登山道を登り始めた。
告げられた騎士は、重い鎧が嘘のように、スイスイと登山道を登りだし、メイズ達の後ろに付いたのだった。
「少し、嫌な気がするな。」
「はっ?」
「いや、なんでもない。」
登山道は中腹に差し掛かっただろうか、魔王がポツリとこぼす。
側に居た騎士が問い返すが、魔王は気のせいだろうと思った。
こんな場所でアヤツの気配がするわけがないのだ。
ましてや、こんな弱々しい気が。
抑えていようが、吹き上がる自身の弟の魔力が、こんな場所で。
メイズとエンジは、中腹辺りの山小屋で休憩を取っていた。
「メイズ様、お水でございます。エンジ様はこちらを。」
汗一つ掻いていない騎士に世話をされていた。
この場所は、騎士達にとって、日常的に体力向上の為に戦闘用の鎧をきて走りこむ場所なのだ。当然全力で走って頂上まで行くこともできる。
巨大な魔力を有しようとも、体力配分ができない子供に付いていくことなど造作もなかった。
「早く、マグマを見たいね。」
「上ってあっついのかな?」
楽しみに眼がキラキラ輝いている二人に騎士は告げた。
「もう少しですよ。がんばりましょう。」
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