30 魔王の悩み、崩壊させられた魔王精鋭軍。
「ほぅ、我が軍の精鋭がたった一人に叩き潰されたと申すか。」
「……は、我が隊は一切反撃も出来ず、申し訳ございません。」
威厳にあふれる眼光が鋭い美丈夫の前に俯く、ボロボロの騎士がいた。
威厳ある美丈夫は、メイズの父親であり、現最強を冠する魔王であった。その証拠に、耳の上あたりから、捩じれた太い角が生えていた。
俯く騎士は、魔王軍の精鋭指揮官であり、魔王に言われ、炎の精霊の村にまで、たった一人の幼子を捕縛しに行ったのだ。
しかし、逆に壊滅させられ、命辛々逃げてきたのだ。こうして報告している今もドンドン顔色が悪くなっていく。
例え、殺されようとも情けない報告しかできなくとも、騎士として主君に嘘を吐く事ができなかったのだ。
「くくく、よいよい。確りと傷を癒せよ。」
「…はっ。」
騎士は魔王のその言葉を聞くと、肩を落としながら退出したのだった。
「……メイズの遊び相手になってもらえればと思ったのだがな。」
「メイズ様の魔力は巨大ですからな。」
「クオイスか。」
誰も居なくなった空間に、魔王は独り言をつぶやく。返事を期待したものではなかったが、返事が返ってきた。
声の正体は、魔王城の宰相を務める邪気魔人のクオイスであった。一見仮面をかぶったヨボヨボの爺さんに見えるが、総合魔力は現魔王に次、また現魔王の遊び友達、幼馴染であった。
今現在、魔王の悩みの種が一つあった。
自身の息子メイズの事であった。極端に魔力が大きかったのだ。それこそ生まれた時から、自身よりも遥かに。魔力が大きい事は別にどうでもいい。魔族は強者主義で、メイズは曲がりなりにも自分の息子、次期魔王である。
問題は魔力が高すぎて、それこそ祖と呼ばれる初期のサキュバスたるランや最強の名を冠する自身。母親として慣れているナイーシャぐらいしかメイズに近づけなかったのだ。
漏れ出した魔力が他者の肉体を蝕んでいるのである。外出する時も、この魔王城や、吸性の湖といった外部魔力を吸収する場所にしか、連れてはいけない。馬車も内部からの魔力を完全シャットダウンする特注の馬車でしか駄目であったのだ。
ランがメイズに魔力操作を教えているが、これから成長期に入って、総合魔力が爆発的に増える事だろう。到底、間に合わないと断言できる。
魔王は父親として遊び友達一人も作らないメイズを心配しているのだ。
魔王城の池に、湖竜を飼う事を許可したのも、少なくとも友達代わりになるかと思ったからだ。
そして今回、普段はこんな強硬策には出たりしないのだが、メイズに次ぐ実力の持ち主。しかも、メイズと似たような歳のものが現れたと聞き、居てもたってもいられなかったのだ。
「…やはり、メイズを直接連れて行くしか、方法はないか?」
「…友達を作らせたいのであれば、それが良いと思います。」
魔王の悩みはまだまだ続く。
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