29 湖龍と水掛け遊び。
湖竜と言うのは、竜とは名ばかりの海竜の湖版である。知能は余り高く無く、巨体な為、天敵と呼ばれる存在も居なかった。本能までもあんまり発達していないのだ。もし、竜と呼ばれる存在なら、知能が竜種の割に低いと言われるワイバーンですらメイズが近づくと全力でもって逃げる。なのにこうしてメイズ達を捕食しようと近づいているのが証拠であった。
湖竜はただ寝ていた。しかし、湖の畔で、巨大な魔力が渦巻いたのを感じる。食欲と言う本能は湖竜にあった。どんな巨大な存在だとしても、自分には敵わない。そんな事を思っていたのかも知れない。今まではそうであったのだから。
湖竜は泳ぐ速度を上げて、湖の外に顔を上げた。
瞬間、顔に炎の攻撃を受ける。普段あんまり攻撃を受けない湖竜は、思わぬダメージと衝撃に後ろにひっくり返ってしまった。
「……(汗)、ああ、大丈夫ですか!?」
「メイズ、行き成り湖に魔法を投げてはいけないでしょう。飛び出した湖竜は突然には止まれないのですから。」
たまたま、飛び出してきた湖竜の顔に炎の魔法をぶつけてしまったメイズは、ひっくり返った湖竜の心配をし、母ナイーシャは、ずれた叱り方をする。
一連の出来事を見ていた護衛達は、『おいおい』と皆内心で思っていた。
魔力の属性変換にはある利点が存在する。それは相性である。水属性の生き物は火に強いと思われがちだが、実は逆なのだ。心底弱いのである。ただ、水属性の生き物は水中にて生活している為、火が届かないだけなのだ。ただ今回のように、湖から顔を出した瞬間、撃ち込まれれば、まだ幼い魔法技術にすら疎いメイズの炎魔法ですら致命傷になってしまったのだ。
ただ、流石に竜の名前を冠しているだけの事は有り、起き上がってメイズに向かって湖の水を掛けてきたのだ。
普通なら、それで終わりの筈だ。メイズという湖竜と比べれば遥かに小さい存在は流されて終わっていた。しかしメイズは現最強と呼ばれた自身の父ですら遠く及ばない魔力を有している。
漏れ出した魔力が余りに巨大すぎて、一種の魔力障壁の代わりをなしたのだ。メイズが濡れたのは髪の端少し冷たく感じる程度であった。
「…水かけ遊びですか?僕もやるぅー!!」
そうではないが、メイズが勘違いしてしまうのも無理はない威力まで減衰してしまった。
そして、勘違いしたメイズは覚えたばかりの一切の手加減ができない魔法でもって、水を浮かせたのだ。
湖の全水を。
まるで、空中に湖が移ったのではないかと錯覚、いや事実であるが、とりあえず球状に浮かせた水を湖竜に向かってぶつけたのだ。
結果は解りきっている。水というのは重たいのだ。そんなものを高圧縮され、ぶつけられれば一溜りもなかった。
「レイガぁ、ごはんだよぉ。」
後に、魔王城の池に湖竜が一匹増えたという。
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