26 魔王誕生。
常に明かりが煌々と煌めくシャンデリアが天上から吊るされ、床には赤い毛の長い絨毯が引かれている。置かれている家具もまた、一目で高級品とわかる豪華な部屋。その中央に巨大なアンティーク調の天蓋ベットが置かれていた。
その巨大なベットに寝ているのは二人。一人は金のサラサラとした長髪の女性。パッチリした青眼に小さな鼻。幼い顔立ちにプルンとした赤い唇はむしゃぶりつきたくなる程だ。豊かな双丘に、芸術品と間違えるほどの括れは見るものを悩殺する。隣には彼女と同じ金髪に鼻立ちや口元は似ている、彼女がお腹を痛めて生んだ赤ん坊が寝ていた。
「…ねぇ、ランさん。やはり、ランさんがこの子の乳母になるのは間違っていると思うの。」
「まだ、気にしておられるのですか?メイズ様の魔力は魔王様すら超えています。もし暴発を起こせばどうなるとお思いですか。」
彼女の名前はナイーシャ、魔王に見初められた唯の人であった。
因みにランは元々、現魔王の正妻であった。彼女の子供は、魔王の子にふさわしい魔力の持ち主であったが、生まれた瞬間から現魔王の魔力を超えていたメイズと比べるのは可哀想であった。
魔族には強者主義が基本の法則であった。その為、次代の魔王にメイズが選ばれたのだ。そしてそのメイズの生みの母、多数存在する妾、いや、最下層の妾の一人であったナイーシャが正妻となり、正妻だったランがその地位から引きずり降ろされたのだ。
しかし、ランはそのことを恨んではいなかった。先ほども言ったが、魔族は強者主義だ。メイズ程の魔力の持ち主ならば仕方がないし、なによりその巨大すぎる魔力を暴走させた時、反らす事ができるものが居ないとランがメイズの乳母として収まることができたのだ。魔族にとっては最高のご褒美であった。
「ふぇ、ふぐっ、うえぇえ。」
ランとナイーシャがいつもの問答をしていると、メイズの切れ目気味なパッチリとした赤い血の様な瞳が開き、途端に潤みだす。そして愚図りだした。他者を一方的に威圧するような溢れ出した魔力と共に。
「あらあら、しょうがないでちゅねぇ。」
ランは瞬時に溢れ出した魔力を自身の魔力で包み、城外へと開け放たれていた窓から放り投げてしまった。そしてメイズを抱き上げて、あやす。
「きゃっ、きゃ。…あうあ~。」
直ぐに泣き止んだ、メイズはナイーシャの方を向かされて、ナイーシャに渡される。
メイズはただ、意味のない声と呼んでいいのか判らない音を出す。
「…聞いた、ラン。今メイズが私の事ママって。」
「あらあら、聞きましたよ。メイズ君はえらいでちゅねぇ~。」
何気に親馬鹿な二人であった。
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