23 炎の魔神、魔王に圧勝。上がる火柱、そして過去。
「なかなか、やるじゃん。でも勝つのは僕達さ。」
「…無理だろ、お前弱いもん。」
木々を数本薙倒して止まったジャガンは立ち上がりながら、強気に言う。しかし、エンジの言った言葉に、額に血管を浮き上がらせた。
「言ってくれる。ちょっとぐらい僕をぶん殴った位で、いい気になってもらっちゃ困るよ。」
「困らねえよ。俺が圧勝するし。」
「……死ね。」
挑発じみた言い方、いや真実挑発なのだろう。しかしエンジは腕を頭の後ろで組みながら、素で答えた。それがジャガンの理性を完全に奪ってしまった。吹き上がる魔力、木々がざわめき、空気が淀みだす。温度が下がったと錯覚するような濃密な殺気が、エンジを襲う。エンジの後ろに居た勇者二人は、武器こそ構えているものの、体の震えが止まらなかった。
「ほ~、面白そうな感じになってきたな。」
ただ、エンジには一切合切、効いていなかったが。のんきにそう呟いたのだった。
「がっは、ぐううううぅ。」
魔力全開で跳びかかったジャガンを、エンジの拳が迎撃する。
「なっ、何故だ。」
「そりゃ、当然。お前の全力よりも、手を抜いた俺の方が強いってだけの話だ。」
疑問を口にするジャガンに、当然とばかりにエンジが答えた。
「嘘だ、嘘だ、うそだ、うそだぁあああ!!」
速度に物を言わせ、エンジの後ろに回って、後頭部めがけ拳を繰り出す。しかし、呆気なくエンジの繰り出した裏拳で、ジャガンの攻撃ごと撃ち落とす。先ほどから、これの繰り返しだった。
「ぎう、…何者なんだ、何者なんだおまえはぁあああ!!」
「魔王の配下で、幼馴染で親友。」
エンジは只々簡潔に答えた。元々、エンジは炎の精霊の村で生まれた。生まれた直後から高位者とタメを張れる実力を有していた。上位の存在へ進化後も、桁の違う実力を有して居たエンジは、時の魔王メイズの父親に目を着けられた。この時、エンジはまだ幼生体であったが、派遣された魔王軍を一人で壊滅させてしまったのだ。次にやってきたのは、まだ幼い、それこそエンジよりもだ。メイズ一行であった。メイズの護衛は下したものの、馬車から降りてきたメイズと相対しそして、エンジは舐めてかかり、圧倒的な実力差で返り討ちにあったのだ。大人も含めてエンジに敵うものなどいなかった世界はメイズによって広げられたのだ。それからというもの、エンジはメイズに付き纏い、一緒に遊んだのだ。幼くても当時の最強の名を欲しいままにしていた者達の更に上を行っていたメイズ相手にである。当然、目の前で転がっているそんじょ其処等の魔王等相手にならないのは当たり前なのである。
「…そんな馬鹿な。そんな馬鹿なぁ!!」
それが判らない、ジャガンは少し離れた場所から、エンジに向けて腕を付きだした。付きだした腕から特大の炎の特大魔法が放たれる。
「その程度で魔王を名乗るのはやめてくれ。」
エンジは一切動じず、放たれた特大魔法に向かって小さな炎を打ち出した。
その小さな炎は魔力を圧縮して作ったもの。ジャガンが放った炎すら吸収して、ジャガンに到達した。瞬間、炎の柱が上がった。ジャガンは何も言えずに光と消えたのだった。
「おっ、あっちも終わってるな。」
気配を探ったエンジはランの向かった方向に、二つあった魔王の気配が消えている事に気付いた。
「二人とも大丈夫か?肉でも食うか?」
そして今思い出したように、後ろで、肩で息をしている勇者二人に声を掛けたのだった。
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