15 死の空間、『お姉ちゃん』とお呼び!!
「シャランさん、起きてください。起きないと朝食、僕が食べちゃいますよ。」
「シャランさん、起きてください。ほらほら、大道芸見逃しちゃいますよ。」
「シャランさん、起きてください。シャランさん。起きないと、起きないと死んじゃいますよ。」
メイズは時間があると、シャランの病室代わりになっている部屋に行き、シャランの手を握って声を掛けていた。
「此処は、何処だ?」
漆黒に包まれた場所をシャランは歩き続けていた。
「私は何処に行こうとしている。」
その疑問に答えるものはいない。そもそも、声に出しているかも怪しいのだ。口が動いている感触はあるものの、耳鳴りがしそうなほどに、何も見えないのだ。自分が光源になったと錯覚するほど、自分以外が見えない。ただ、何処かに行かなければいけないという思いに、引っ張られ唯歩いていた。
「私は、どうなったのだ。」
全身を確かめるも、少々動きが悪いが、何処にも傷はなかった。
「私は、……誰だ」
もう、自分の姿も見えなくなってきた。意地と根性で足を動かしていたが、それも限界だった。そもそも、何処と言うのがあるのかも怪しい。体が急速に動かなくなってきた。視界が暗闇に閉じられる。
「ああ、…これが死というものか。」
その、闇に身を任そうとしたところで、声が聞こえた。
「シャランさん、起きてください。起きないと朝食、僕が食べちゃいますよ。」
「シャランさん、起きてください。ほらほら、大道芸見逃しちゃいますよ。」
その声は、純粋さにあふれている魔王の声だった。
「…誰だったかな?思い出せないな。大事な人だったような…。」
少しだけ、自分が見えるようになった。
「シャランさん、起きてください。シャランさん。起きないと、起きないと僕、女装してシャランさんの事『お姉ちゃん』と呼びますよ。」
「激有りでっ!!」
暗闇からそう聞こえた瞬間、鼻から赤い愛を溢れさせながら暗闇がはれて、声の主を見上げていた。
「…、シャランさ、ん?」
声の主メイズは、シャランの事を困惑したような、嬉しいような微妙な顔で見つめていた。
「ふむ、メイズ、それは違うぞ。」
「へっ?」
「さぁ、お姉ちゃんと呼ぶのだぁ!!」
「呼びませんっ!!」
何にしても、シャランは目を覚ましたのだ。
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