9 疑問と詰め寄り、注文と突っ込み、いちゃもんと思わずもれた笑み。
魔王メイズが女装コンテストに出場し、恐怖を感じている時刻を同じくして、勇者ウオイスもまた、先代勇者たるジャナサンに詰め寄っていた。
「メイズ君が魔王ってどういう意味ですかっ!!」
「おいおい、落ち着けよ。てか、本当に気付かなかったのか。あの凶悪といっていい程の潜在魔力に。」
メイズの潜在魔力は二年前から更に増えていた。二年前ですら随一の実力者たるシャランに凶悪と評された程のものが、更に増えていたのだ。勇者であるウオイスやジャナサンが気が付かない筈がないのである。
ウオイスは確かにメイズの潜在魔力には気が付いていた。気が付いていたが、町興しのイベントを起こしたり、そのイベントで女装させられ涙目になっていたメイズ、更には少し話しただけだが良い子と呼んでも差し支えないメイズの人柄に、魔王であるという事に結び付けられなかったのだ。
「…しかし、なんであんな良い子が魔王なんですか。」
「お肉追加ぁー!!」
勇者の悲痛な問いは、聖僧(女)リナルール=マザードの注文の声に掻き消された。
その空気の温度差に思わずズッコケるウオイス。
「おお、いいこけっぷり。」
ジャナサンが思わずウオイスのズッコケを評価する。
「お前らぁ、話に入ってこないと思ったら飯を食ってたのかっ!?」
「だって、昨日から真面な物食べてないじゃん。精々が味気ない乾燥保存食ぐらいだったし。」
ウオイスの叫びにリナルールは、口にステーキ定食を放り込みながらそう言う。
「この酒最高だな。」
「こっちのツマミもイケますよ。」
「うぉおおい、そこっ、二人共っ。酒飲んでんのかっ!?」
格闘家バックル=ガラルは、お米から作られた珍酒に舌鼓を打ち、魔法研究者マナサキ=ギューセンは、酒と一緒に注文した小口唐揚げに満足気だ。
まだ魔王の問題が片付いていないのに、酒盛りを始め、リラックスし始めた仲間に怒鳴る勇者。
「何言ってんの。いい子なんでしょ。あの魔王って言われてる、…メイズ君だっけ。あんた気に入ったんでしょ。ましてや、今これだけあの寂れた町を復興してくれてんじゃん。魔王とか関係ないでしょ。何かあった時になんとかすればいいのよ。」
先代様だってそのつもりなんでしょ。リナルールの目はそう語っていた。
思わず呆ける勇者。
「ぶっ、くくくっ、くははははははははははは。その通り。嬢ちゃんの言う通りだな。メイズは魔王って言葉が世界一似合わない、良い奴だよ。」
ツボに入ったのか、爆笑しだすジャナサン。勇者ウオイスも笑みがこぼれていた。
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