8 コンテストと観衆、歓声と恐怖。
新春際、魔王メイズが勇者ウオイスが旅だった次の年に提案した町興しイベントが元となっている。もともと、さびれた商店街を盛り上げるイベントだったはずなのに、今年二年目のイベント概要を作っているとき、数人の外部商人が露店を出したいと交渉に来たのが始まりだった。元々この商人達は宿屋《魔王城》のお得意様で、年に十数回泊まっていく。
そんな彼らが、たまたま聞きつけたものだった筈だ。しかし、商人という生き物は耳聡いもので、どこから聞きつけたのか、あれよあれよという間に増えていった。それならいっそ国に掛け合い正式な祭りにしてしまおうと言う事で、町一つを祭り会場にしてしまったのだ。露店を出したいといった商人達に近隣の国や町に宣伝をしてもらい、勇者が旅立ってちょうど二年目の今日開催となった。
火炎魔法が空に打ち上げられ、祭りの開催の宣言が音声拡大魔法で町中に響き渡った。四方に伸びる町のメイン通りには露店が並び立ち、中央の広場には巨大な円形ドーム、イベント会場が建てられ、大陸中から集まった人々を楽しませている。彼らの今日の宿は、宿屋の主人たちが話し合い、空き家をも利用して収容することとなった。
メイズは今イベント会場の舞台裾にて妖艶な女性二人に腕を組まれた状態で居た。これだけ聞くと羨ましい限りだが、これから彼は衆人観衆の目に晒される。女装した姿を。去年なら、此処まで大きくなく、見に来るのも精々が知り合いばかりだった為、ふざけて優勝まで貰ったのだが、ここまで大きくなると恥辱が湧きあがってきた。
「ううう、…やっぱり今から無っていうのは。」
「ダメに決まっているでしょう。男の子なんだから覚悟決めなさい。」
「なら、こんな恰好させないでください。」
メイズの主張も全く取り合ってもらえない。まぁ当然だろう。元々彼が企画したものなのだから。
メイズの前に出て行った人物がいた。細身の一見女性のようで、切れ目が特徴的な綺麗と言われるタイプ。胸が詰め物に見えないほど形がいいのが服の上からでもわかる。
「おおおーーーと、これはすごい。本とに女性じゃないのか。イベント間違ってないか?これは男が女装するイベントだぞ。」
司会の人もヒートアップする。オオーと野太い歓声も聞こえた。
「オカマバーのラブちゃんです。指名してね。」
喋った瞬間、幻想が崩れてしまった。ガラガラのおっさん声だったのだ。
「声がオッサンダぁーーーー!!」
「ゴォラァー、誰がオッサンじゃー!!」
司会の言葉に完全に野太い声で返してしまった。
遂にメイズの番がやってきてしまった。
「はいはい、メイズちゃん、これ持ってね。」
「なんですか?」
メイズは渡されたものを、疑いもせず受け取る。受け取って確認をしようとした瞬間、背中を押され、舞台に跳び出した。
「ウォオオオオオオオオオオーーーーー!!」
「ひっ!」
跳び出した瞬間、観客席の方から、男性も女性の物も混じった今大会一番の歓声が上がった。
「おおおっと、前年度優勝者の宿屋《魔王城》のメイズくんだぁ。」
しかも司会がしっかりとあおる。まだ声変わりをしていないメイズは、意識しなくても女性の様な高い声が自然に出る。ましてや、今の状況に怯えているメイズは美少女度がますます上がっていた。
歓声が鳴りやまない事に、これからが真剣に怖くなった魔王様であった。
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