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守られるべき男の奇跡のM字

「不可抗力のM字しか勝たん!」


俺が放ったその一言のせいで、学園は一瞬にして世界一危険な事故多発地帯へと変貌を遂げていた。


いまや校舎内のすべての曲がり角には、猛スピードで角を曲がってくる女子生徒たちが溢れかえっている。


目的はただ一つ。

俺に自然にぶつかって恥ずかしそうにM字で転ぶためだ。


なんだよそれ…


「はぁ…廊下は走るなって言われてるだろうに…風紀委員に怒られるだろ」


うんざりしながら廊下を歩く俺。


すると案の定、角から勢いよくギャルっぽい女子生徒が飛び出してきた。


「きゃあ〜〜♡(※棒読み)」


ドサッ!!


と、俺の3メートル手前で、彼女は一人で盛大にダイブし、スカートを捲り上げながら綺麗なM字開脚で倒れ込んだ。


まだ俺と接触すらしていない。


「……」


「…あっ、いやん♡見ちゃダメぇっ♡(※チラッ)」


完璧な(つもりの)恥じらいポーズを決める女子生徒。


俺は足を止め、氷のように冷ややかな視線で彼女を見下ろした。


「…何してるの?まだ、ぶつかっても無いでしょ?」


「えっ?」


「…マイナスだよ」


「「「グハッ!?!?」」」


廊下の物陰で様子を窺っていた全校女子たちに、目に見えるほどの衝撃波が突き刺さった。冷酷すぎるマイナス判定!


「もぅ!演技のM字を見たいなんて俺、一言も言ってないでしょ!!」


俺は我慢の限界に達し、廊下の真ん中で激怒した。


「なんなの急に!?下手くそな大根演劇見せられても冷めるだけなんだけど!?そんな事するなら、今まで通り胸押し当てて来た時の方がよっぽどドキドキしたよ!!全然分かってない!!」


ヤケクソになって叫んだ俺の言葉。


その瞬間。


「「「…えっ????」」」


物陰に潜んでいた女子たちとコメント欄の頭の上に、巨大な電撃が走った。


シズカの裏配信コメント欄:

『き……聞いてない……!』

『演技のM字はマイナスなの!?』

『せっかく露出少なくしたのになww』

『胸を押し当ててきた時の方がドキドキした…だと……!?』

『つまり、おっぱいスキンシップはプラス評価だった!!??』

『リオン様のスケベ全開で笑うwww』



女子たちの頭の中で、歓喜の歌が流れる。


「リオンくんっ♡」


「へ?」


怒りをぶちまけた俺の前に、物陰からゾロゾロと女子生徒たちが姿を現した。

その目は全員、さっきまでの演技M字の白々しさから一変し、情熱と欲望の炎で燃え上がっている。


「そういうことなら早く言ってよぉ♡♡」


「え、あ、なに?」


「おいでリオンくん!ぎゅ〜〜っ♡♡♡」


「襟曲がってるよ♡直してあげる♡なんてね、むぎゅぅぅ」


「重いからおっぱい乗せるね♡♡(圧倒的密着)」


「ぶはっ!?ちょっ、圧が、胸の圧がすごいって!!」


M字演技をバッサリ切り捨てられた女子たちが、一斉に怒涛のスキンシップ&甘やかし攻撃へと回帰!


結局、俺は次の体育の授業が行われる体育館にたどり着くまでの間、クラスや学年を問わず全校女子から代わる代わる抱きしめられ、胸に顔を埋め、全身を甘やかされ尽くして天国(※窒息寸前)へと送られるのだった。


「ふはぁ…柔らかぇ♡って、ちがう!俺の目的はM字…ううん、まあ今日のところは…これでいっか♡」



◇◇◇


体育館。


「いいか?今日の体育の授業は開脚前転だ。女子から順番に始め!」


女子たちが「えー、だるーい」「体が硬いから無理〜」などと文句を言っている。


「よし、全員終わったな。次はクラス唯一の男子、リオンの番だ!無理はしないように慎重に」


女体育教師が優しく声をけてくる。


そう、この世界では男子は守るべき儚い存在だ。

体育の授業でも、俺だけは重病人でも扱うかのように優遇されている。


「はい、わかりました。よし」


俺はマットの前に立った。


フッ…甘いな先生。

俺は運動神経なら自信がある。開脚前転など朝飯前だ。


女子たち、よく見ておけ!


「ふんっ!」


俺は勢いよくマットに手を突き、頭を丸めて回転した。

回転の頂点、完璧なタイミングで足を大きく開く。


ここで手を入れて!


よし、手元を……ツルッ!!


「あっ!?」


手元が勢いよく滑り、俺の体は制御を失ってそのまま…


ズンッ!!!


「痛ってええええええっ!?」


盛大に尾てい骨を打ちつけた。


勢い余って上半身は後ろに倒れ、両脚は天に向かって『M』の字を描いたまま、完全に固定される。


太ももの内側が無防備に晒され、股関節が激痛を訴える。


くっ…くそがああ!

力加減間違えた!

ただ俺が一人でドジ踏んだだけじゃねえか!!恥ずかしすぎる!!


顔を真っ赤にし、目尻に涙を浮かべながら、俺は股を開いたまま固まってしまった。


あーあ、大失敗だ。


女子にカッコいい所を見せるどころか、ただのドジな男として笑いものになって…


…ん?


なんだ?


体育館が、し~んと静まり返っている。


…え?


恐る恐る目線を上げると、そこには。


息を呑み、目を見開き、顔を林檎のように真っ赤にした女子生徒たちの姿があった。


「……っ!?♡」

「か、神?神はいたんだ♡」

「男の子が…自ら太ももを全開にして…お尻ついて痛がってるっ♡」

「あかん、理性が飛ぶ!呼吸忘れてた♡」

「無防備すぎるって!あの太もものスキマ、国宝に指定するべきでは!?」

「男子の完璧な恥じらい♡好き♡」


女子全員が、微動だにせず俺を穴が開くほど凝視していた。


何人かは鼻の下を押さえ、何人かは拝むように手を合わせている。


「あ、あの…みんな…どうしたの?」


俺が痛みに耐えかねて、うるうると湿った瞳で声を発すると、


「「「ッ〜〜〜♡♡(昇天)」」」


女子たちの群れから、ドサドサと倒れる音が響き渡った。


シズカの裏配信コメント欄:

『自爆M字開脚キターーーーーー♡』

『全女子生徒が即死してて草www』

『自ら恥じらいながら晒す無防備なM字は反則すぎるwww』

『シズカ:国宝級のドジっ子男子リオタン…尊い♡』

『シズカ!体育配信ありがと♡』

『リエちゃん授業中は配信しないから』

『ああ見えて真面目なんだよリエは』

『本日、体育館にて全校女子の理性が崩壊しましたwww』


俺はまだ知らなかった。


この貞操観念逆転世界において、男子が自ら恥じらいながら晒す無防備なM字開脚が、女子にとってどれほど致死量のラッキースケベであるかを。


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