推しと太ももとオタクの矜持
「大丈夫?緊張してる?」
俺の部屋に着き、ベッドの端に腰掛けたシズカさんに優しく声をかける。
「う、うん……(ポチポチっ)」
リアルでは相変わらずボソボソと呟きながら、制服の胸ポケットから覗く二台目のスマホ(裏配信)へ向けて爆速で指を走らせていた。
◇◇◇
シズカの裏配信コメント欄:
『主:初見は帰れ!見んな!同接伸びたら公式に見つかるだろ!!』
『そうだ!初見は帰れ帰れ!www』
『あたしらの隠れ家が無くなるだろ!www』
『同接増えるとマジでヤバいから静かに見ろwww』
そんな裏配信の狂乱など知る由もない俺は、シズカさんの緊張をほぐそうと甲斐甲斐しく世話を焼き始める。
「じゃあ、ブレザーはハンガーに掛けておくね?これで良し!…あ、あのさ、さっきの太もも…早速いいかな?」
「うん……」
俺はシズカさんのブレザーを受け取り、胸ポケットに入った『二台目のスマホ』ごとハンガーへと掛けた。
◇◇◇
シズカの裏配信コメント欄:
『あっ、画面見えない……!』
『服ごとハンガーに掛けられたwww』
『画面が壁しか映らんwww』
『まるで自分がハンガーに吊るされた気分www』
『えっ?もしかして、このまま音声だけで楽しむスタイル!?www』
カメラが遮られたことで、リスナーたちの期待と妄想が最高潮に達する。
「それじゃあ、ベッドにペタンって座ってくれる?」
「うん……」
「っ!はぁ〜〜〜〜っっ、幸せ♡♡♡」
ベッドに座ってもらったシズカさんの膝の上に迷わず頭を乗せ、両腕でそのすべすべの太ももをぎゅっと抱きしめる。
太もも特有の柔らかさと温もりが顔全体を包み込み、俺の理性は一瞬で崩壊した。
「ごめん…もうシャワーなんて待てないっ♡」
「きゃ♡」
「シズカさん……淹れるねっ♡」
「っ……(ポチポチっ)」
『主:あん♡リオンくん♡あん♡』
スマホに必死で可愛らしい喘ぎ声を打ち込みつつも…太ももに顔をすり寄せる俺の刺激に耐えきれず、彼女の口からは限界オタクの本音がそのまま漏れ出ていた。
「おほっ♡リオタン♡いぐいぐぅっ♡♡(※爆音生声)」
◇◇◇
シズカの裏配信コメント欄:
『……』
『……wwwww』
『「あん♡」って可愛く言いたかったのねwww』
『出ちゃうよな…直でリオン様に攻められたらその声出るよなwww』
『てかリオン様、太もも吸い付くの優しすぎだろwww』
『リオン様の生アエギ助かる』
『私も逝く』
『えっ?もう満足したの?』
『男子って、普通なかなか果てないのよね?搾精も時間掛かるって聞いたよ?』
「ふぅっ!ごめん、シズカさんが可愛すぎて我慢できなかった♡」
太ももの感触とシズカさんの反応が良すぎて、あっという間に果ててしまった俺は、息を整えながらデレデレと呟く。
◇◇◇
シズカの裏配信コメント欄:
『シズカが可愛くて我慢できなかった♡(CV:リオン)』
『うぉ〜〜〜!言われたい!あたしも言われたいよ〜〜〜!』
『「可愛すぎて我慢できなかった」は全女子キュン死するだろ!!』
『シズカ羨ましすぎて爆発しそう』
「はぁ…最高の癒やしだったよ。シズカさん、当然今日はこのまま泊まっていくよね?二回戦も…」
「帰ります」
即答だった。
「…え?」
◇◇◇
シズカの裏配信コメント欄:
『は』
『は?』
『何言ったいま?』
『帰るの!?!?www』
あまりの即答ぶりに一瞬フリーズしたものの、俺は意を決して彼女の手を握りしめた。
「じゃ、じゃあ…俺の彼女に…」
「なりません!」
「えっ!?な、なんで!?」
食い気味の全否定に、俺はガチでショックを受けた。
◇◇◇
シズカの裏配信コメント欄:
『えっ?』
『えっ?』
『なんで断ってんの!?』
『天下のリオン様からの彼女指名だぞ!?』
混乱する俺(とコメント欄)に対し、シズカさんは眼鏡をクイッと上げ、かつてないハキハキとした『超高速の生声』で一気に捲し立てた。
「推しとは適切な距離を保って陰からひっそりと見守りたいんです!太ももが恋しくなったらいつでも呼んでください!種は妊娠するまでもらいたいので!学校ではこれまで通り関わらないでください!以上です!」
「早口オタクだ…」
圧倒的なオタクの熱量に、俺は言葉を失った。
◇◇◇
シズカの裏配信コメント欄:
『ワロタwwwwwwww』
『うおぉぉ~!!』
『オタクの鑑wwwwwwww』
『さすがシズカwww揺るぎないオタクの矜持www』
『種は妊娠するまでもらいたいので!wwwww』
『これがシズカだぞ!公式見てるか!?www』
『彼女にはならないけど太ももは提供するスタイル草www』
『最強の都合の良い?ヒロイン誕生www』




