一口のペースと古参リスナーのマウント
ダブルデートの途中で立ち寄ったレストラン。
賑やかな店内で料理を平らげた俺とトモヤは、同時に箸とフォークを置いた。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした。お、美味しかった…ですっ」
男二人の声が重なり、トモヤが嬉しそうに目を細める。
自分と同じペースで食事が終わったことが、少食でおっとりした彼にとって心地よかったのだろう。
だが、この何気ない食事風景をカメラで追っていたリエの配信画面では、一部のリスナーたちが異常な『違和感』に気づき始めていた。
◇◇◇
コメント欄:
『ねえ…今ので気づいた?』
『ん?なにが?二人とも綺麗に完食したねって話?』
『リオン君、トモヤ君が食べ終わるタイミング『完全に合わせた』よね???』
『えっ!?』
『女子って食べるの早いじゃん?男子は遅いでしょ!トモヤ君が気まずくならないように、先に食べ終わらないように一口のペース調整してただろあれ!!』
『えぇ〜…流石にそんなの気のせいでしょ?www』
『は?リオンにわか乙』
『「気のせい」とか言ってるやつ最近見始めた新規だろwww』
『毎日だよあんなの』
『誰にでもやってる』
『リエちゃんとご飯食べてる時も、マユちゃんとカフェにいた時も、全員の食べる速度に合わせて同時に「ごちそうさま」言えるように調整してるんだよこの男は』
コメント欄で古参リスナーたちが新規リスナーに対してドヤ顔でマウントを取り合うという謎の光景が広がっていた。
俺は、そんなリスナーたちのマニアックな考察など知る由もない。
…うん、トモヤ君も残さず美味しく食べてくれたな。相手に早く食べなきゃって焦らせないようにペースを合わせるのは、食事のマナーとして当然だしな。
前世で親やマナー講習で教わった同席者への配慮を無意識にこなしていただけの俺は、お冷やを飲みながら満足そうに頷いていた。
だが、古参リスナーたちの解説によってその狂気的なレベルの気遣いを知った新規リスナーや、向かいに座っていたユウカは、完全に語彙力を失っていた。
「リ、リオン様…まさか、トモヤのペースに合わせて食べてたの?」
「ん?ああ、トモヤ君はおしゃべりしながらゆっくり食べるタイプだなって思ったからさ。一人だけ早く食べ終わって見つめられてたら、トモヤ君も落ち着いて味わえないだろ?」
「あふぅっ♡(尊さの過剰摂取)」
「リオン君…どこまで優しいんですかぁ…僕っ♡(感極まってウルウル)」
トモヤまでうるうるした瞳で俺を見つめ始め、ついに向かいのリエが「もうっ!リオンのたらし!!」と嫉妬混じりに突っ込んできた。
『新規リスナー全員死亡wwwww』
『リオンの破壊力よ…』
『無意識で全人類にこれやってるの怖すぎるだろwww』
『トモヤ君が完全にメロメロになってて草』
『全女子がリオン様と一緒にご飯食べたいって狂乱してるわ』




