ダブルデート!頭ポンポンの威力
休日。
待ち合わせ場所である駅前の広場。
賑わう人混みの中、遠くからおどおどしながら歩いてくる人影を見つけ、俺は大きく手を振った。
「お〜い!トモヤ〜!こっちこっち!」
「リ、リオン君っ!声が大きいですぅ…」
すれ違う女性たちの視線を気にして顔を真っ赤にしながら、トモヤが小走りで駆け寄ってくる。
その少し後ろからは、お気に入りの服を着て緊張気味に歩くユウカと、彼女のリエが並んで歩いてきていた。
すでに二人共スマホを構えてライブ配信を開始しているようだ。
「よしっ、じゃあユウカちゃんはリエが相手してね♡ダブルデート開始!」
「えっ!?ア、アタシがリエちゃんと!?なんで?…トモヤとデートなんじゃ…」
「うん、トモヤ君はまだ女の子と二人きりだと緊張しちゃうだろ?だから俺とトモヤ君、リエとユウカちゃんで回ろう!」
「ちょっとリオン!?ダブルデートってそういう意味だったの!?」と呆れるリエをよそに、俺は当然の配慮としてトモヤの手を優しく引いて歩き出した。
だが、この前代未聞のダブルデートの組み合わせを見たリエの配信画面は、一瞬でリスナーたちの悲鳴と困惑で埋め尽くされたのだった。
コメント欄:
『はぁ!?!?!?』
『昨日リオン様が言ってた明日のダブルデートプランって…トモヤ君とのデートだったの!?www』
『ダブルデートとは???(概念の破壊)』
『【新カップリング誕生】リオン×トモヤ』
『待って、神イケメンが気弱美男子の手を引いてエスコートしてる図、ヤバくない?』
『男子同士の手繋ぎデートとか…はかどるわね♡♡♡』
『尊すぎて目が潰れるんだが???』
『男同士の友情?助かる♡』
『ちなみに幼馴染カップルチャンネルも登録者爆伸びしてて草www』
◇◇◇
「リ、リオン君…みんな見てます…手繋ぐの、恥ずかしいですっ」
「ん?そうか?迷子になったら大変だし、トモヤ君可愛いから誘拐されたら困るだろ?ほら、あっちの服屋さん行こうよ!」
「っっっ♡(顔面大爆発)」
『トモヤ君、気をしっかり持たないとリオン様に落とされるわよ♡』
『www』
『もう手遅れ(落ちかけてる)だろこれwww』
『ユウカちゃん……合掌(乙)』
俺は弟みたいで可愛い男友達をリードしているだけのつもりなのだが、周りからの見え方は完全に違っていた。
ショッピングモールを歩きながら、俺はトモヤとの距離を縮めるために質問を投げかける。
「トモヤは何が得意なんだ?」
「えっ?得意なこと?ん〜、本を速く読むこと…とか?」
「お〜!速読か!すごいじゃん!」
俺が素直に感嘆の声をあげると、後ろからついてきていたユウカが、もどかしそうに口を挟んできた。
「もぅ!アンタったら、そんな男の子みたいな事!もっとリオン君みたいに、力強くてカッコいい特技はないの!?」
この世界では読書などの大人しい作業を男子は好み、スポーツなどの活発さが求められる事は苦手だったりする。
しょんぼりと俯きかけるトモヤ。だが、俺は首を大きく横に振った。
「ユウカちゃん!速読って本当に凄いんだぞ!俺には絶対に出来ないし、集中力も頭の回転も必要だしさ。トモヤももっと自信持っていいぞ。俺より凄いんだから」
「リオン君より…凄いの?…僕が…」
パァッと目を輝かせるトモヤ。
ユウカも胸を撃ち抜かれたように赤面した。
「ア、アンタ…実は凄かったのね…っ、もっと好きになっちゃう…って、違うから!!勘違いしないでよね!!」
バタバタと手を振るユウカのツンデレっぷりに苦笑しつつ、俺はトモヤの耳元でこっそりアドバイスを囁いた。
「なあ、トモヤ。一回、ユウカちゃんの頭のこの辺、ポンポンってしてみな?」
「ど、どこですかぁ?」
「この、おでこの上の辺り。ここを優しくポンポンすると、女の子って気持ちいいみたいだぞ」
前世で妹やペットを撫でる時に見た知識だが、確かリラックス効果があるはずだ。
リエも喜んでくれるしな。
「は、はい!あの、ユウカちゃん…ポンポン♡」
「あ…ん、ふぁぁっ♡♡♡」
トモヤが言われた通り、おっかなびっくりユウカの頭をポンポンと撫で下ろすと…
ユウカは一瞬で膝から崩れ落ち、うっとりとした顔でトロけてしまった。
◇◇◇
コメント欄:
『トモヤ〜〜〜っっ!!!』
『ポンポンすな!威力が強すぎるwww』
『ユウカちゃん即オチしてて草www』
『わかるわ、わかるわよユウカ…リオン直伝のポンポンは耐えられないわよね…』
『男子からの頭ポンポンとか、この世界の女子からしたら核兵器級の破壊力なんだが!?』
『気弱男子を立派なタラシに育成していく聖父www』
〜こうして、俺のズレた知識と無自覚な指導によって、トモヤは気弱男子から無自覚に幼馴染を陥落させる天然たらしへと覚醒していった~




