ゾンビ化したクラスメイト
翌朝、学校に登校した瞬間。
…なんか、女子からの視線がヤバい。
ここは貞操観念逆転世界。
女子からの視線なら昨日も感じていたが、今日は一段と視線が刺さる。
廊下のあちこちで女子たちがスマホを片手にヒソヒソとざわついていた。
あの動画?
なんかネットで面白い動画でも流行ってんのかな?
全く心当たりがない俺が教室に入ると、さっそく人垣を割って誰かが近づいてきた。
昨日、校舎裏で出会った美少女配信者、リエだった。
「リオン…あの、今日も配信してるんだけど、いい?」
「ああ、別にいいけど」
スマホを三脚自撮り棒にセットして掲げながら、リエはおどおどと俺の顔を見つめてくる。
昨日のガサツなヤンキー座りスタイルはどこへやら、妙におしとやかで、どこか上目遣いだ。
「あのね、ブレザー…ありがと。洗濯して持ってきたから、返すね」
「えっ、ダメだよ!今日も羽織ってなよ。まだ辛いんだろ?っていうか、自分の上着をちゃんと持ってきなよ」
「…うん♡」
俺の気遣いに、リエは顔を真っ赤にしてブレザーを愛おしそうに胸に抱きしめる。
「あれ?そのお茶…昨日のだよね?もう冷めてるだろ。ちょっと待ってて、温かいの買ってくるから!今日もお茶でいいか?それとも、美少女はミルクティーとかの方が好き?」
「えっ♡」
「よし、ミルクティーにしてくるよ。ところでリエちゃん、なんか昨日と話し方変わった?もっとガサツ…ギャルじゃなかったっけ?」
「あ、えっ!?」
『リオン君行っちゃった』
『ガサツwwwww』
『バレて〜らwww』
『相変わらず無自覚イケメンすぎる♡』
画面のコメント欄が草を生やす中、照れ隠しにオロオロするリエ。
その手には、昨日俺が渡した。なぜか口をつける部分にラップが巻いてある、冷え切ったお茶のペットボトルが固く握られていた。
「リオンは私に気遣ってくれたの!!私の男なんだから、あんたたち寄ってこないでよ!!」
カメラと教室の女子たちに向かって牽制するように叫ぶリエ。
『はいはい』
『脳内お花畑乙』
『まだ何も始まってないだろw』
コメント欄に流れる冷ややかなツッコミ。
そして、そのやり取りを見ていたクラスの肉食女子たちが、静かに、しかしギラギラとした目で動き出した。
「リオン君…私にも…すっごく体調悪いフリしたら優しくしてくれるかな…」
「待って、私が裸になればブレザー貸してくれるよね!?」
「一口飲んだお茶くれー!!!」
教室のあちこちで、わざとらしい体調不良メイクを施し始める女子たち。
果ては、その場でブレザーどころかブラウスまで脱ぎ捨て、キャミソール一枚になって「寒い…体調が…」と嘘アピールし始める猛者まで現れる始末だ。
そこに、購買で温かいホットミルクティーを買ってきた俺が戻ってきた。
「リエちゃん!はい、ミルクティー。お腹温めてね。本当は俺が、生理に効くマッサージもしてあげたいんだけどさ。いくら体調不良でも、男が女の子のお腹を直接触るのは流石にマズいよな」
「なっ!?♡♡♡」
あまりの破壊力に、リエの頭から「ぷしゅ〜」と湯気が立ち上り、そのまま膝から崩れ落ちそうになる。
「…ってか、なんでみんなゾンビみたいになってんの?仮装パーティーか?体調は良さそうだけど…なんで服脱いでんの?」
キャミソール姿でうろつくクラスメイトたちを見て、俺は首を傾げた。
『wwwww』
『ウケる笑』
『ゾンビwww』
『それより生理に効くマッサージって何!?』
『そんな神技あるの!?』
『リエリエ!今すぐやってもらいなよ〜!』
『いやいや、そんな度胸ないのは全員知ってるだろwww』
配信のコメント欄は、俺のマッサージというパワーワードによって、昨日以上の狂乱状態に陥っていた。
〜こうして俺の普通の気遣いは、またしても女子たちの理性を木っ端微塵に砕いていくのだった〜




