女子の生配信中に『生理で辛いなら上着着る?』と気遣ったら大炎上した
「…でさぁ、スカートをチラッと捲ったの!そしたら男子が顔を真っ赤にしちゃって〜マジでウケるんだけど!」
昼休み、校舎の裏手から楽しげな女子の声が聞こえてきた。
俺、リオンは、購買の自販機で買ったばかりの温かいペットボトルのお茶を一口飲みし、声のする方へと足を向けた。
そこにいたのは、一人の美少女だった。
学園でも有名な派手系美少女、リエだ。
同じクラスのギャル。
彼女は地面にガラ悪くヤンキー座りをし、ミニスカートの裾から太ももを惜しげもなく晒し、ブラウスからは谷間を出しながら、三脚にもなる自撮り棒に固定したスマホに向かって身振り手振りを交えて話している。
友達と電話か…いや、生配信の最中らしい。
「…だからさ~、男子なんてホントチョロいよね。リエにかかれば男なんていつでも落とせるっつ~の♡」
コメント欄の女子たちと盛り上がっているようだが…俺は彼女の表情を見て、思わず足を止めた。
強気な笑みを浮かべてはいるものの、額には薄っすらと汗が滲み、唇の血色が明らかに悪い。
邪魔をしてはいけないと思いつつも、俺はそのままスルーすることができず、声をかけた。
「重そうだね、大丈夫?」
「は?なんだよアンタ。スマホなんて重くねぇし!何?男子のくせに私にナンパのつもり?」
突然の乱入者に、リエは鋭い視線で威嚇してくる。
男子を見下すような、いつもの強がりな態度。だが、俺は首を横に振った。
「あっ、違くて。アッチの方。体調悪そうだけど大丈夫?って意味。…生理なんだろ?顔色悪いし、声も無理して出してるっぽかったからさ」
「なっ!?」
リエが絶句し、目を見開く。
この世界では、男子が女子の生理周期や体調を気遣うなんて文化はほとんど存在しない。
女子は男を守る強い存在であり、男子の前で弱みを見せるのは恥だとされているからだ。
だが、俺にとってはただの当然の気遣いだった。
「ほら、俺のブレザーだけど羽織った方がいいよ」
俺は着ていたブレザーを脱ぐと、彼女の華奢な肩へそっとかけた。
「っ!」
ふわっと広がった俺の体温と香りに、リエの体がビクッと跳ね上がる。
「あとコレ、温かいお茶。お腹温めると少しは楽になるから。…ごめん、手持ちが無くて、一口飲んだやつだけど」
「あ…あ、ありがと♡」
照れくさそうにお茶を受け取るリエ。
あんなに強気だった彼女が、蚊の鳴くような声で呟き、おどおどと俺を見上げている。
「…あっ、わりぃ。今、配信中なんだけど…」
「あ、そうなの?邪魔してごめん。まあ、ラノベみたいなダンジョンで無双した訳でもないし、ただの会話だろ?配信でバズったりもしないって。じゃあね」
俺はひらひらと手を振り、その場を後にした。
残されたリエは、顔を耳まで真っ赤に染め上げ、俺が渡した…男子の口が直接ついたお茶のペットボトルを、両手でギュッと胸に抱きしめる。
「宝物にする♡」
うっとりと呟く彼女の瞳は、すっかり『女』の顔になっていた。
その時、スマホ画面。
そのコメント欄のスピードが、限界突破していた。
『待って今の男誰!?!?!?』
『男子に守られるとかどんな気持ちなんだろ?』
『男が女子の生理周期気遣うとか聖父かよ!?』
『ラノベ読む男子とか』
『ウチらと話合いそう』
『間接キスを自分から!?!?(尊死)』
『リエ顔真っ赤で草wwwww』
『コメント全く見てなくて草。完全に落ちてるだろこれ』
『リエの顔が完全に乙女になっててヤバい』
『リエリエ!そのお茶ちょ〜だい!!』
『特定班あくしろ!!あの神イケメン男子の通ってる学校どこだよ!!!』
『リエと同じ学校に決まってるだろ!』
『てか、うちのクラスの男子だ♡』
『えっマ!?!?詳しく!!!!』
『昨日転校してきたばかりのやつなんだよね』
『マジかよ!』
『なんか他の男子とは雰囲気が違うとは思ってたの!』
『あいつ…絶対に私が抱く♡』
〜こうして俺の全く知らないところで、その動画は切り抜かれ、ティック○ックやユー○ューブで数百万再生を突破していた〜




