高級レストラン、男の覚悟
放課後。
「リエちゃん!配信したままでいいからついてきて!」
「あ、うん!」
俺がリエを連れてきたのは、普段の高校生には少し縁遠い、おしゃれな女性たちが行き交う高級街だった。
ブランドショップや格式高そうな店がずらりと並んでいる。
その中でも一際存在感を放つ、超高級フレンチレストランの前で俺は足を止めた。
「今日は、ここでディナーを食べよう」
「は、はいっ!」
普段のガサツさはどこへやら、圧倒的な高級感に呑まれて背筋をピシッと伸ばすリエ。
コメント欄:
『リエちゃんガチガチで草www』
『ここめちゃくちゃ高い店じゃん!?』
『私、去年のボーナスが出た時に一回だけ行ったことあるわ…』
『高校生が入る店じゃないのよwww』
店内へ足を踏み入れると、身なりの整った支配人風の女性店員がサッと立ちふさがった。
「お客様、大変恐れ入りますが、当店では学生服でのご入店、および店内の生配信はお断りして…ん?ちょっとチーフ…なに?…ええっ!?同、同時接続数二十万人!?…えっ、リオン様!?はっ!!大変失礼いたしました!すぐにご案内いたしますわ♡♡」
掌を返してウットリとした目で頭を下げる支配人。
コメント欄:
『支配人ーーーっっ!!www』
『頭の中のそろばん弾く音聞こえたぞwww』
『ナイス判断だぞチーフさん!!』
『リオン様って聞いた瞬間の目の色の変わりようよwww』
案内された豪華なテーブル席で、運ばれてきたコース料理を前にリエは固まっていた。
「ナイフとフォークは外側から…ナイフとフォークは外側から…」
「ふふ、リエちゃん。なんか呪文でも唱えてるみたいだな」
「わ、笑うな!!いきなり、こんなお店に連れて来られて…緊張してんのよっ!」
「あはは、可愛いなリエちゃん」
コメント欄:
『可愛いwww』
『リエちゃん頑張れwww』
『マナー必死に思い出してて愛おしい』
『わかるよ』
そんな微笑ましいやり取りの途中、俺はグラスを置き、表情を引き締めた。
「…それでさ、ちょっと真面目な話なんだけど…」
「えっ?」
「俺たち…まだ『付き合ってない』んだよな?」
「は、はぁぁぁぁ!!???」
俺の唐突な確認に、リエは素で素頓狂な声を上げた。
コメント欄:
『【悲報】付き合ってなかった』
『ええ〜〜っっ!?それはないってリオン様!リエリエ可哀想過ぎるって!』
『あんなお泊まりしておいて付き合ってないの!?』
『ってことは私にもワンチャンスあるってこと!?♡』
「だからさ…」
俺は椅子を引いてガタッと立ち上がると、迷わずリエの隣へと歩み寄った。
周りの客や店員たちの視線が集中するが、そんなものはどうでもいい。
俺はリエの目をまっすぐに見つめ、ハッキリと、堂々と頭を下げた。
「リエちゃん!いや、リエ!俺と、付き合ってください。お願いします!」
「えっ?え、ええ〜っ♡♡♡♡♡」
あまりの真っ直ぐな男気に、リエは両手で顔を覆い、今にも溶け出しそうな笑顔で崩れ落ちた。
そして、その歴史的瞬間を目撃した配信画面は、もはやコメントの文字すら判別できないほどの特大爆発(サーバー落ち寸前)を起こしていたのだった。
コメント欄:
『ぐわあああああああああ!!!!!!』
『なにこれ!!!!映画!?!?』
『男子側から高級店で堂々と告白とかカッコよすぎて無理♡』
『「リエ」って呼び捨てにしたあああああ(尊死)』
『はい♡はい♡私が付き合います♡♡(幻聴)』
『全女子が泣いたっ!』
『末永くお幸せにーっ!!!(血涙)』
『リエリエよがっだぁ~!』
〜こうして、配信越しに数十万人の女子たちが見守る中、俺たちの正式な交際がスタートした〜




