リオンから衝撃の告白
タンスから出た『紐パン』の衝撃でコメント欄が完全に崩壊している中、俺はハッと我に返って時計を見上げた。
「あ、もうこんな時間か。二人とも、そろそろ夜のご飯とか色々と考えないとだな」
絨毯の上でようやく身体を起こした二人に向かって、俺は声をかける。
「リエちゃんは、もちろん泊まってくよね?」
「う、うん?えっ!?」
唐突なお泊まりの誘いに、リエの目が丸くなる。
「マユちゃんは帰ろうね」
「なんで!?!?」
今度はマユが「差別だ!」と言わんばかりに叫び声を上げた。
「だって…マユちゃんとは、ほとんど知らない仲だしさ。いくらなんでも初対面に近い女の子をいきなり部屋に泊めるのはちょっと…」
「リエちゃんだって初対面みたいなものじゃないの!じゃあ、なんでリエちゃんはオッケーなのよ!?」
食ってかかるマユに、俺は不思議そうに首を傾げた。
「なんでって……好きだから?」
「っっっ!??!?!」
部屋の中に、巨大な落雷が落ちたかのような静寂が訪れた。
画面の向こうのコメント欄すら、あまりのパワーワードに一瞬だけピタリと流れるのを止めたほどだ。
「リ、リオンっ!い、いま、す、好きって…言った!?いつからっ!?」
顔を林檎のように真っ赤にして、指を震わせながら尋ねてくるリエ。
俺は至極当然のことのように頷いて笑った。
「えっ?最初からだよ。じゃなきゃ、出会った初日にブレザー貸したりしないって。好きでもない女の子を自分の部屋に泊めたりもしないよ?」
自分にとっては、ごく自然な特別扱いの告白。
だが、この貞操観念逆転世界において…男子からの「最初から好きだった」というストレートすぎる告白を受けた美少女配信者のキャパシティは、完全に限界突破した。
「ぷしゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ♡♡♡」
頭頂部から勢いよく湯気を噴き出し、目を回したリエは、そのまま言葉通りバタンキューと絨毯の上へ卒倒したのだった。
◇◇◇
『ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』
『告白したああああああああ!!!!』
『最初から!?!?あの初対面の上着かけから既に好きだったの!?!?』
『男子側から「好きだから」って言って泊める世界線どこ????』
『リエ失神wwwwwそりゃ失神するわwwwww』
『マユ完全敗北どころか公開処刑で草wwwww』
『「好きでもない女の子泊めない」とかイケメンすぎて無理……』
『プロポーズ見せつけられた全国の女子リスナーの気持ち考えたことある!?!?(大歓喜)』
失神して湯気を吹いているリエを横目に、当然マユも黙ってはいなかった。
「ちょっと待ってよリオン君!アタシ、絶対に引き下がらないからね!?」
不服そうに唇を尖らせ、詰め寄ってくるマユ。
「アタシにも温かいお茶くれたよね!?お姫様抱っこまでしてカフェに運んでくれたよね!?ねえ、お茶をくれたのって、リエちゃんとアタシだけでしょ!?」
必死なアピール。
マユからすれば、自分もリエと同じ特別な扱いを受けた!と思いたかったのだ。
だが、俺は首を傾げながら素直に理由を明かした。
「ああ…うん。実はね、最初遠目で見かけた時、後ろ姿がリエちゃんかと思ったんだよ。派手な雰囲気とか、三脚自撮り棒を持って配信してるところとか、雰囲気が似てたんだよね」
「え?リ、リエと間違えただけ?」
一瞬でショックを受けた顔になり、血の気が引いていくマユ。
自分がただの勘違いの身代わりだったのかと絶望しかけたその時。
俺は言葉を続けた。
「声かけたら人違いだったんだけどさ。すごく可愛い美少女だったから、体調悪そうなのを放っておけなくて」
「び、美少女♡♡♡」
あまりにも自然体で放たれた「美少女」の一言に、マユの思考がフリーズする。
「(っっっ!人違いだったけど、可愛いから助けたって、それただの無自覚ナンパ兼ヒーローじゃんバカ!!!)」
真っ赤になって固まるマユ。
そして、そのやり取りを逃さず拾っていた配信画面のコメント欄は、本日何度目かわからない大爆発を起こしていた。
◇◇◇
『美少女だから放っておけなくてww』
『ナチュラルたらしすぎるだろこの男子w』
『「リエと間違えた」で落としてからの「美少女だから助けた」のフォロー完璧すぎて全女子が落ちるわ』
『マユの顔が完全に乙女になってて草』
『マユ!諦めるな!まだワンチャンあるぞ!!』
『美少女♡って呟いたまま固まっててワロタ』
『男子の口から素で美少女って単語が出てくるの尊すぎだろ……』
『この男、無自覚に何人の女子を落とせば気が済むの????』
〜こうして、本命宣言をされたリエだけでなく、諦めかけるはずだったマユまでもが無自覚な神対応によって完全に毒抜きされてしまうのだった




