表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
からくり競艇【白銀の波切り、魂のフルスロットル】  作者: 水前寺鯉太郎
第七部 最速機兵(スプリント)編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
88/99

「激突——「一」が、跳ね上がった」

一マークが迫っていた。

 三コースから俊治のまくりが来る。カミソリのような伸びだ。深田の冷静さと永島の鋭さが混ざり合った、計算された暴力だった。


 光はレバーを放さなかった。

 俊治の機首が光の右舷を削ろうとした瞬間——光は揺りかごの形を作った。まくりの圧力を受け止める。俊治の速度が根になる。朱雀の機首が、その力を前へ変換した。


 ドンッ——!!


 弾き出されたのは俊治の方だった。


「なっ……!」


 俊治の機体が外へ流れた。光は一マークを最小半径で回り切った。


「一号艇・速水光、一マーク先頭!!」


 バックストレッチへ出た。

 その瞬間だった。

 右指の傷跡に、これまでとは違う何かが走った。熱ではない。振動でもない。もっと深い場所からの——圧力だ。朱雀のチタンフレームが、光の骨格と完全に噛み合った。徳山の広い水面の底が、足の裏に届いた気がした。


 鳴門で感じた「一」の感触より、はるかに深い。

 二周目。俊治が追ってきた。三重血脈の全力が朱雀の後流を走る。しかし今の光には届かなかった。バックストレッチを走るたびに、右指の何かが強くなっていく感覚があった。

 最終コーナーを抜けた。チェッカーフラッグが翻った。


「一号艇・速水光、一着!!」


 ピットに戻った。エンジンを切った。右指を見た。普通に見えた。傷跡があるだけだ。しかしあの瞬間の感触が、骨の中にまだ残っていた。


「光くん、今のバックストレッチ——データに異常な数値が出てるっすよ」


 あかりが駆け寄ってきた。タブレットの画面を見せた。熱効率ログが、これまでの「一」の反応とは別の波形を描いていた。


「……何が起きたんだ」


「分からないっすよ。でも、何かが変わったっすよ」


「あかりさん。夜、測定器を当ててくれ」


「はいっすよ」あかりは答えた。声がまだ少し震えていた。

 足元でネが低く一声鳴いた。徳山の水面が、夕日の中で静かに輝いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ