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からくり競艇【白銀の波切り、魂のフルスロットル】  作者: 水前寺鯉太郎
第四部 全国記念戦線編

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「共同作業——これが俺たちの、最初のだ」

十二月。徳島の冬空。


「……っ、うわっ! 優奈ちゃんからラインがアホほど来とる!!」


 助手席の杏奈が叫んだ。スマホの画面に丸山優奈からのメッセージが溢れている。


「杏奈ちゃん、どこ!? 先行入場始まっちゃうよ!」


「丸山さん!? なんで徳島に——」


「先月から徳島支部でコスプレの練習してるって言ってたろ。もしかして忘れてたのか」


 光は言った。


「そうじゃったか! でもそれより——うち、今回主役級のキャラで、衣装のメンテもウィッグのセットも終わってないんよ!!」


 杏奈はサンバイザーを下げ、ピンセットを操って猛烈な勢いでアイラインを引き始めた。その集中力は、戸田の優勝戦でチルト〇・五度を縫い付けた光のそれにも勝る正確さとスピードだ。


「分かった。俺は車を安定させることに集中する」


 光は全神経を地脈に集中させた。路面の振動を拾わないように、速度を一定に保つ。


「……よし! ベース完了! 次はつけまじゃ!」


 ピンセットで繊細に睫毛を並べる杏奈の横顔を見て、光の脳裏に昨夜の記憶が蘇った——


「……ひ、光! 今ちょっと揺れたろ!?」


「す、すまん——地脈が乱れた」


 杏奈が一秒だけ光を見た。それから、ピンセットを戻した。「……バカ」と小声で言った。

 後部座席でネが、流れる景色を眺めていた。


「優奈ちゃんには『渋滞にハマった』って送ったけど……あの子、勘が鋭いんよ。絶対バレとるわ……」


「気にするな。間に合わせることが先だ」


 光はアクセルを踏み込んだ。徳島の道を一直線に走った。


「うちと光の、共同作業じゃけんな!」


 杏奈の言葉を聞きながら、光は思った——これが俺たちの、最初の共同作業か。


「あと十分で会場だ」


「よっしゃ!」


 メイクを終え、ウィッグを被った杏奈が不敵に笑った。G3の優勝戦に匹敵する「炎」が瞳に宿っていた。


「……っていうか、何のキャラをやるんだ」


「来てから分かる!」


 会場の巨大駐車場に滑り込んだ。ネが後部座席で伸びをした。


「光」杏奈がドアに手をかけながら言った。「……見ててくれよ」


「ああ」


 駐車場から、会場の音楽が微かに聞こえてきた。

 杏奈が「行くで!」と言って、ドアを開けた。

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