それぞれの成長
170目です。
「なんだ⋯あれは⋯⋯」
ガッツは屈強な戦士五人から、何の抵抗もせずただ暴行を受けていた。
それはしばらく続いた。
気温が上がり始めた頃、戦士が一人ずつ倒れていった。
最後まで立っていたのはガッツだった。
「どうだ?ジラト。
これが俺の成果だぜ!
もう何をされても絶対倒れねー!」
ジラトは言葉を失っていた。
こんな訓練は見たことがなかった。
「これで何故…ガッツが立っておるのだ…?」
ジラトの心の声が空気を静かに振るわせた。
「なんだなんだー?
俺の成長っぷりに驚いて声も出ねーってか!」
ガッツの体はよく見れば傷だらけだった。
上裸のその体の至る所に痣がある。
痣だけではない。所々に刃の跡まで残っている。
「どれほどの……」
「わかったであろう…?
こやつの強さが…」
「あぁ…。もう何も聞かずとも全て理解できた気分だ…。
他の者も修行中か?」
「そうだな…。
魔族の少女は面白いぞ…?」
「うむ。会いに行こう」
ジラトはテオドールに案内され、
学院内の扉の前に辿り着いた。
テオドールに目で合図をされ、
扉に手を掛けようとしたジラトは何かに気づく。
扉が震えている。
ジラトは一瞬ためらい、テオドールの方を見た。
テオドールは静かに頷いた。
ジラトは深く息を吐き、一気に扉を開いた。
ジラトは自らの心音を聞いていた。
それ以外の音が何もないからだ。
(頭がおかしくなりそうだ…)
ジラトは声を発することさえもできなくなっていた。
広い修練場。
その中心には見覚えのある少女が、坐禅を組んでいた。
「ネ……ネフィア…か」
張り詰めていた空気が一瞬にして消えた。
「お久しぶりですね、ジラトさん」
気がつけば目の前にネフィアがいた。
「あ、あぁ…。久しぶり…か?
それよりも…見違えたな…」
「ジラトさんこそ!また一段と逞しくなりましたね!」
「我など…大したことはない。
それよりも、さっきのはなんだ…?」
「ん?さっきの?
あ!"気"のことですね!」
「"気"…?」
「私は魔力を放出できないから代わりに"気"を身につけたんです。
"気"なら私も戦えるんですよ!ね!ロウ先生!」
「………誰もおらぬぞ?」
「あれ?さっきまでそこにいたのに…」
「…ガッツにも会ってきた」
「ガッツさんに?まだ一緒に修行しているのですか?」
「それはもう地獄のような、な」
「そうでしたか…。
ヒルダさんとクラウンは、
修行を終えて都市の方にいるみたいですよ」
「……オリバーは、どうした?」
「オリバーさんだけ何も話を聞かないんです…」
「そうか…。
それも、行ってみるしかなさそうだな…。
ネフィアも来るか?」
「いえ、私はまだ今日の分が終わってませんので…」
「そうか、ならば行ってくる。
また報告に戻る。
テオドールよ、オリバーの居場所はわかるか?」
「うむ、こっちだ…。
行く前に一つ。
彼は兄さんが直接手解きをしている…。
どうなっているかはわからんぞ…?」
「オリバーのことだ。
苦難があってものらりくらりと乗り越えているだろう」
そうして、オリバーのいる部屋へと向かった。
部屋の中は"外"だった。
果てしなく広がる青空と芝生。
その奥に彼がいた。
何かに耐えて立っているわけでも、
坐禅を組んで静寂を生み出しているわけでもない。
眠っていたのだ。
ご愛読ありがとうございます。
これからの投稿の励みになりますので、
宜しければブックマークと評価をお願いします。




