異形の来訪者
169話目です。
「ここか…」
大きな外套に身を包んだ大男が魔導学院都市を訪れていた。
体長は三メートルを優に超える。
外套の下でも、太く逞しい四肢が隠しきれていなかった。
市民は誰もそちらを見なかった。
どう見ても異形。
"擬似自然魔法"を生活に取り入れたこの都市では、
異物など本来すぐに排除される。
だが、誰も動かない。
触れてはいけない何かを、皆が感じていた。
「この感じ…久しいな…。
どれだけ鍛錬を重ねても、これだけは変わらぬな…」
その大男は、そんな街並みを見渡しながら悠然と闊歩していた。
「しかし、師の提案で結局来てしまったな…。
さて、どこへ行けばやつらに会えるのか……」
大男の足は導かれるようにマギステリウムの中心へと向かっている。
「これは……圧巻だな……」
遠くから見えていた巨大な塔。
その麓まで来たその大男ですら、
学院の大きさに圧倒されていた。
「よく来たな…」
大男は突然誰かに声をかけられ振り向いた。
そこには老人が一人、立っていた。
「…お前は…いつぞやの…?」
「ワシのことを覚えているのか…?」
「もちろんだ。あの時は世話になった、が……
何故か今会うまで忘れてしまっていたようだ」
「それも魔法だよ…。
まあ、一人だけ何故か効かなかった奴がおったがな…」
「ふっ…。オリバー、だろう?」
その名を口にした瞬間、
大男の胸がわずかに張った。
「……奴らは強くなっておるぞ…?
特にあの出来損ないの勇者……いや、それも今では…」
「ん?それはもしや…?」
「…見てみるか?」
大男は静かに頷き、老人の後をついていった。
「…老師よ。名を伺っても良いか…?」
「しがないただのジジイだよ…。
まあどうしてもと言うなら…」
「親切にしてもらっている相手の名を知っておくのは当然だろう?」
「そうだな…。
わが名は、テオドール・アルケインだ…」
「アルケイン……?彼の有名な…?」
「ワシは違う…。
時間があればお前も会ってみるがよい…」
「…まだ別にいるのか…?」
「ここからならよく見えるだろう…?」
大男の視線の先、窓を覗くと下の方で、
一人の屈強な男が数人の戦士からただひたすらに殴られ続けていた。
「ガッツ…か。
あれは、なんだ…?」
「どうやら修行の一環のようだな…」
「見ておけんな…!」
「おい、待て…!何を…!」
大男は突然、窓ガラスに体当たりをし、そのまま下へ落ちていった。
そうかと思いきや。
次の瞬間には外套が宙を舞い、
その奥から巨大な翼で羽ばたく竜人族が現れ、
落雷のような激しい轟音を鳴り響かせ、急降下していった。
次の瞬間、地が爆ぜた。
砂煙の奥で大男は無傷で立っていた。
「久しいな……出来損ない…だったか?」
「ジラト…!ジラトだよな…!?
何でこんなとこに…!ていうか、どっから降ってきたよ…!?」
「度が過ぎた修行に見えてな…。
助太刀に参った」
「助太刀だって!?
…そんなのいらねーよ!
ジラト!そこでよーく見てやがれ!
俺の修行の成果をよ!!」
ご愛読ありがとうございます。
これからの投稿の励みになりますので、
宜しければブックマークと評価をお願いします。




