昇華
167話目です。
今日は、曇りか。
湿度も高い。
あまり気が乗らないな…。
…あれ?体が痛くない。
毎朝、体を起こす修行から始まるのに。
おかしい。
それに…何で、外で寝てた?
ん?あれは…アルケイン卿……。
「お…?早かったな…。
まだ寝ていてもよかったのだぞ…?」
突如、戦慄が走った。
なんだ。
何か欠けてる。
怖い。
ダメだ、近づけない。
近づいちゃダメだ。
殺される。
…………。
いや、殺された…?
「……気分はどうだ…?」
背後から声が落ちる。
動けない。
「死ぬ、殺される…。
怖いか…?」
「こ、怖いに決まって……」
「お前は…死んだ…。
儂がこの手で…殺した…」
「…な…なん……で…?」
「何故、お前は恐れていない…?
何故、恐れるフリをしておるのだ…?」
「違う…!」
「違わない…。
お前の魂は、微塵も震えていない…。
何を…見てきた…?」
アルケイン卿の手のひらが、オリバーの視界を覆った。
「い、痛い…!放せよ…!」
「動くな…」
アルケイン卿の手が淡い光に包まれる。
「…そうか……」
アルケイン卿の声と同時に光が止み、
オリバーの頭から手を離した。
「もしかして…記憶を……?」
「"巨人の悪夢"か…。
擬似的な死を…経験しておったのだな…」
「乗り越えてきたよ…」
「大変素晴らしい…。
儂の想像を遥かに超える体験…いや、冒険…」
アルケイン卿は、静かに曇天を仰いだ。
「…儂も…楽しませて貰った……」
「勝手に記憶除いて楽しまないでよ…!」
「すまない…。
懐かしいバカ弟子の顔まで出てきたもんでな…」
「確か…師匠の師匠…だったよね…?」
「あぁ…。奴はな、
この世で唯一"古代森族以外で自然魔法を扱える"奴だった…。
出自が、ちと特殊でな…」
「特殊って…どういうこと…?」
「懐かしい…。
だがおかしい…。
何故見た目が変わっておらんのだ…?」
「え?あれ?聞こえてない?おーい」
「やはり時間魔法、か…?
そこまで生にすがりつく男でもなかったが……」
「おーーーい!」
「はっ…!な、なんだ…?」
『修行、やろうよ』
「ふっ…。やはり…恐怖などなかったか…」
そしてアルケイン卿は今日も同じ攻撃方法で手ほどきをする。
大魔法から高速の初級魔法。
「…面白いな……」
アルケイン卿は舌を巻いた。
『ねえ!手加減しないでよ!』
オリバーは前回とうって変わって無傷だった。
「手加減などしておらぬわ…。
全く…本当に殺してやろうか……?」
アルケイン卿の手が強まった。
しかし、オリバーはそれですら躱し、跳ね返し、
そして反撃を加える。
―――また一瞬だった。
アルケイン卿の拳が腹を……。
貫くことなく、素手で止められていた。
『同じ手は通用しないよ?』
「…儂の指導の賜物だな……」
『ん?なに?』
「…なんでもないわ…。
今日は終わりにしよう…」
『え?もう終わり?』
「今日は…ただ確かめたかっただけなのだ…」
『何を…?』
「お前、"転生"したな…?」
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