静の極致
160話目です。
ネフィアもまた学院内のとある部屋へと案内されていた。
「お前は魔法が使えないらしいな!」
「はい…。
なので私は戦闘要員ではないんです…」
「でも戦えるのだろう?」
「徒手戦闘のみとなりますが一応は…」
「ならば修行だ!
と言っても殴り合うわけではないぞ!」
「え?」
ネフィアは、拳闘士の加護を持ったロウとの修行は、
徒手戦闘による鍛錬をひたすら行うだけだと思い込んでいた。
「おまえには"気"を教えてやろう!
まずはそこに座れ!」
ネフィアは言われるがままその場に座った。
「坐禅を組め!わかるか?こうだ!」
ロウは実際にやって見せ、ネフィアに教え込む。
「後は、目を瞑り集中する!
体内の魔力とは別の流れを持つ力を探せ!」
「はい…!」
ネフィアもロウの真似をしてやってみる。
しかし。
「まずは"静"を支配しろ!
これが出来なければ"動"も出来ない!」
「は、はい…!」
「我々加護持ちが魔法使いに唯一対抗できる力となる!
お前は加護も魔法もないのだろう?
"気"とはお前のためにあるものだ!」
うるさい。
"静"を説く者とは思えない声量だ。
放っておいたらどこまで喋るかわからない。
ネフィアは返事をするのをやめた。
音が無くなった。
ロウのうるさい声も服が擦れる音も空気が動く音も。
体内の魔力"だけ"が巡るのを感じる。
"気"の行方はまだわからない。
わからないのか、そもそも無いのか。
疑いそうになる心を押し殺し、無を作った。
「どうだ?わからないだろう?
最初はそんなものだ!」
隙があれば喋りだす。
「今日はこれで終わりだ!
初日にしてはよく頑張ったぞ!」
ネフィアは何を言っているのかわからなかった。
まだ、何もしていないのに。
そう思いながらその場で立とうとするが、
立てずにその場に倒れ込んでしまった。
「はっはっはっ!やはりな!
日が落ちるまでやれば誰でもそうなる!
ここで動けるようになるまで休んでいろ!」
日が落ちるまで…?
ネフィアは言われてやっと気づいた。
ロウがまたすぐに喋りだしたのではない。
ネフィアの時間がスッポリと抜けていたのだ。
(なんで…こんなに入り込んでしまったんだろう…)
そう思いながら次に目を開けた時には日が昇っていた。
「え…?」
「よく寝ていたな!
あれからずっとそこにいたのか?
どうだ?立てるか?」
ネフィアは昨日とは違い、何事もなく立つことができた。
「…あれ?」
「"気"とは面白いものだろう?
それにしてもネフィアは筋がいいな!」
「"気"なんて…全然わからなかったけど……」
「それでいい!
まだわかるはずなんてないのだからな!
さあ!今日も始めるぞ!」
ネフィアはその場に座り、目を瞑った。
魔力。
これだけは体内を渦巻いているのがよくわかる。
"気"はまだ見つけられない。
でも…この感じ…。
あっという間に日が暮れる。
そしてまた今日も同じく"気"を練る修行。
(そう言えば最近、ロウさんの口数が減ったような……)
そう思いながら自然と無に入り込んでいた。
その間、ロウは言葉を失っていた。
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