アルケイン卿
153話目です。
『なんで…ここまで導いてくれたの?』
「お主に興味があるからだ…」
『僕たちじゃなくて、僕?』
「そうだ…。
儂の魔力が、
久方振りに反応しよった…」
『それって凄いことなの?』
「実に……いつぶりだ……?
100年程度だろう…。
このような感覚は……」
『おじいさんはここの学院長?』
「…儂が、か…?
……そうだ…。学院長…しておったな…」
『名前はなんて言うの?』
「……儂か?
儂は、あー……」
「アルケイン卿だ」
後ろからあの門番の声が聞こえた。
「…そうだったそうだった。
儂は…皆から…アルケイン卿と…呼ばれておる…。
おい、そっちの者よ…。もう、行ってよいぞ…」
「はっ!失礼します!」
門番は素早くその場を去った。
「ごほんっ…。あー、だいぶ意識がハッキリしてきおった…。
お主、面妖な飾りを外せ。儂に素顔を見せよ…」
オリバーは言われた通り仮面を外した。
「これでいい?」
「……ふむ。……名は?」
「オリバーだよ」
「あ…?オリバー…?
うーむ…。古代森族にしては、珍しい名であるな…」
「な、なんで…古代森族って……」
「儂の魔力を辿れたのであろう…?
それはお主だからこそ見えたのだ…。
後ろの者共、不思議であったろう?」
「ああ…。
初めて来たはずなのに、迷いもせずここまで来たんだ…」
「ずっと不思議だったわ…」
ガッツとヒルダに同意するように、
ネフィアとクラウンも静かに頷いていた。
「……ほらな…?
あれは、森族にしか見えぬのだ。
まだ生きておったのだな…古代森族よ」
「わ、わからないよ」
「オリバー」
「……なに?」
「自然魔法を見せてみよ」
「え、急に言われても…」
「早うせんか。
おっと、その後ろの者共よ。
暫し、学院内を見て回っておれ。
この者を説かねばならぬからな」
オリバーの周囲に風の渦が生まれる。
その風はそこらに散らばっている魔導書や教本を巻き上げた。
それらの本は高くそびえ立つ本棚へと流れていき、
音を立てずにそっと佇んだ。
そして、風は静かに収まった。
「…どうだった?」
アルケイン卿は、目を見開いた。
その静寂はとても長く感じたが、
やがて、ゆっくりと話し始めた。
「………素晴らしい。
齢にして……十七、十八か…?それでこれ程の精度とはな。
誰に教わった?ガイアか?フェルディナントか?
……いや、あやつにはまだ教えておらなんだか…」
「え、いや、どちらでもないです」
「なに?では誰だ?
儂の知らぬ大魔法使いが未だ居るというのか?」
「えーっと…。
シェインという人なんだけど…わかるかな?」
「シェインだと…!?
あやつは未だ生きておるのか…!?
いや、しかし…儂が教えたのは……
いつだったか…たしかあれはー…。
そうだ、100年以上も前だぞ…?」
「え、じゃあ人違いかも…」
「あやつはここに来たときにはもう自力で自然魔法を使っておった。
ただの人族の分際でな…。いや、ただの人族ではなかったか…。
どちらにせよ、今の儂でもよく覚えておる、最優の生徒だった」
「そうなんだ。
でも、僕の知ってるシェインはそんなおじいさんじゃないよ?」
「あやつのことだ。
どうせ時を操る魔法でも習得したのだろう。
もう何があっても驚きもせんわ」
「うーん…。そんな風には見えなかったけど…」
「まあ、シェインの話は後にしよう。
今はお主、オリバーだ。
あやつに教わったとは思えぬほど澄んだ魔法だ…。
やはり古代森族の自然魔法は素晴らしい…」
「そりゃありがとう。
日々鍛錬は欠かさないからね」
「鍛錬…?何をしておるのだ?」
「目を閉じて自然を感じるだけだよ。
そうすると魔力を纏う感じがわかるんだ。
これをずっと保ち続ける…それだけ」
「シェインはそのように教えるのか…。
抽象的だが、実に理にかなっておるな…。
どうだ、儂の下で学んでいかぬか?」
「そのつもりでここに来たんだ。
まさかこんな不思議なおじいさんがいるとは思ってなかったけど」
「不思議なおじいさんか。
かなり一般的な意見であるな。
術式改変は使えるか?」
「うん、教えてもらったよ」
「そうか、難しいはずなんだがな。
まあそれなら話が早い。
他の者も魔法を学びに来たのか?」
「みんな強くなりたいんだ。
その為なら魔法でも何でもやるつもりだよ」
「そうか…。
部屋を用意しておく。今日はそこで休め。
その間に儂は学びの場を整えておこう。いいな?」
「え、いいの?」
「気にするでない。
先程の門番を呼び寄せておく。
彼について行き、部屋へと案内してもらえ」
「ありがとう、助かるよ」
「では明日、また帯を手繰って来るがよい」
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