別れ
151話目です。
それぞれの心音。
歯が軋む音。
膝を揺する振動。
それだけが空間を満たしていた。
誰も空気を振るわせない。
そのうち、皆は静かにバラけていき、
それでも尚自分と向き合い続けた。
オリバーは、ベッドで寝そべり考えていた。
今、何かを変えたからといってどうにもならない。
小手先じゃない純粋な強さ。
ずっと気づいていた。
ずっとずっと前から。
強さが足りない。
どうすればいいかもわからない。
でも……。
『強く、なりたいな』
心の声が、空間を振るわせた。
皆は驚き、オリバーの方を向く。
「だよな、大将…」
『あれ…?出てた…?』
「そりゃあもう、ハッキリとな。
強くなりてぇか…。うん、そうだよな…」
『クラウンも同じ?』
「当たりめぇだろうが。
初めて大将の力になれると思ったら、あのザマだ…。
死にたくなったよほんと…」
『死ねないけどね』
「うるせぇよ。
…あー、ダメ元なんだが、宛がねぇこともねぇぜ?」
『ダメ元でもいい。
試せることは全部やろうよ』
「そうか。
ここから少し離れた所になるんだが、
"マギステリウム"という場所がある。
魔法技術の最高峰だ。
ここならみんな強くなれる…が…、
受け入れてもらえるかはわからねぇ」
『マギステリウム…。
いいよ、行くだけ行ってみよう。
みんなもいいかな…?』
「…俺は……。
…うん、強くなりたい。
ついて行くぜ」
「私もよ。
こんな所で止まってられないわ」
「私もです。
魔法はあまり使えませんが、やれることはあるはずです」
「…………」
『ジラト、どうしたの…?』
「……我も強くならねばならぬ。
オリバーたちに助けてもらった恩もまだ返せておらぬ。
それに……この世界の果てを共に見届けたいのだ」
『そっか!じゃあ……』
「我はここで抜ける。
マギステリウムへは行けぬ」
『ジラト…!なんで…!?
一緒に行って強くなろうよ…!』
「共には行けぬ。
我の修行の場はそこではない」
『じゃあどうするんだよ!
ここでお別れなんて嫌だよ!』
「何も今生の別れとは言っておらぬだろう。
少し落ち着け。
我は、師の元で稽古をつけてもらう。
受け入れてくれるかは分からぬがな」
『師の元って…!
あの巨竜のところに行くの!?』
「そうだ、あの者は見境なく殺すそこらのたわけ者とはわけが違う。
この世の誰よりも聡い。そして、誰よりも強い。
我が力を乞うのにはちょうど良い。
まあ…、何も言わず去ったことも詫びねばならぬしな…」
『そっか…。
多分この話の前から決めてたんだよね?
それなら仕方ない…。
僕たちは一旦ここでお別れだね』
「ああ。…すまぬな、我儘を言って。
それだけ本気なのだと受け取ってくれぬか?」
『うん、わかってるよ。
僕たち、強くなったらまた会えるよね?』
「当たり前だ。さっきも言ったろう?
この世界の果てを共に見届けたいのだ。
オリバーと共にな。
我は"千年竜の背骨"にある集落にて待つ。
良い頃合いになったら訪ねてくれ」
『うん、わかったよ。
お互い頑張ろう』
「ああ。キリもよい。我は先に行く。
……じゃあな」
「ジラト……。絶対会いに行くからね!」
「ジラト!ぜってー強くなってやるからな!」
ジラトは振り返ることなく錆びついた扉を蹴破り、
仲間のいる小屋を後にした。
「ジラトの旦那…カッコいいなぁ…」
『僕たちも行こうか。マギステリウムへ!』
ご愛読ありがとうございます。
これからの投稿の励みになりますので、
宜しければブックマークと評価をお願いします。




