千年竜の背骨
150話目です。
―――よくぞここまで来た。
―――我が同胞を屠り、牙を向けた胆力は見事。
―――だが……まだ浅い。
―――退け。
―――我は逃げぬ。
―――……ほう。ジュゲ=ル=アンヴァス=ディラト=ヴォルグ=ライン=カナンか。
以前とは見違える程、強くなったようだな。
―――だが。
―――まだ、足りぬ。
"それ"は地面が抉れるほどの風圧を残し、空の彼方へと消えた。
オリバーたちは地に伏せ、ピクリとも動けなくなっていた。
朦朧とする意識の中で、彼は思った。
最初から"千年竜の背骨"に遊ばれていた。
攻略ごっこをさせられていた。
格の違いを見せつけられた。
工夫?戦略?そんなものただのお遊びだった。
そんなもの、力で捻じ伏せてしまえば何も残らない。
小手先はもう通用しない。
だからといって何が出来るんだ。
もう……これ以上は………。
天井。
窓の外、碧天。
やっぱこの空の綺麗さはどこでも変わらない。
狭いのに広い部屋。
仲間が誰一人居ないからだ。
「………寝てた?
え……?これって……」
ゴホッゴホッ。
なんだが少し埃っぽい。
背中が軋む。
起きるのは案外楽だった。
何も考えず階段をおりる。
(あれ…?なんで…2階だと……?)
そして、皆はいた。
あの時と同じ様に卓を囲んでいた。
「おせーぞ、オリバー」
「ったく…また寝坊?」
「…え?……なにこれ…?」
オリバーは、ガッツとヒルダの言葉に答える余裕はなかった。
「我らも…わからぬのだ…」
「みんなここで寝てたんです」
「ここって…あの民家だよな?って話してたところだぜ」
(…覚えてたのか……)
「私たちそんなに長い間寝てたのかな…?
家の中が凄く汚れてて…」
「どれ程の年月を経れば、このようになるのか…」
「考えてもわからねぇもんはわからねぇ。
ただ、俺らは助かったってことだけは確かだ」
「おじいさんが助けてくれたのかな…?」
「だとしたらとんでもねぇ魔法使いだぜ?
礼を言いたいところなんだが…どこにも居ねぇ」
「外まで見に行ったの?」
「いや?扉が開かねぇんだ…。
せっかく助かったのに、閉じ込められちまったのか?」
「わかんねーよ。
そんなことよりさ、あの竜…強かったな…」
「私たち、何もできなかったね…」
「うん。僕たちの弱さを思い知ったよ…。
あんなやつ、本当に勝てるのかな…?」
「そう言えばあの竜、喋ってましたよね?
最後、呪文のような何かを呟いていたような……」
「ジュゲ=ル=アンヴァス=ディラト=ヴォルグ=ライン=カナン、であろう?」
「すげーな!よく覚えてんな!」
「当然だ…。
我の真の名であるからな。
…今までずっと忘れておったがな…」
「でぃらと?で発音あってるのかな?
それでジラトってことだったんだね」
「ああ、それは友が名付けたあだ名だがな」
「発音、難しそうですからね」
「すげぇ名前だが、なんか意味があんのか?」
「この言葉を思い出すのも懐かしいな…。たしかこうだ」
―――勇を讃え、竜を継ぎ、空を駆け、時を越え、災を祓い、友を守り、真を掲ぐる者。
「意味わからねーけどカッコいいな!」
「その名前をあの竜が呼んだということは、
ジラトはあれが何か知ってるんだね?」
「そう…。我は……知っていたのだな…。
名を呼ばれ、記憶がハッキリした。
あの竜…あの者は……我が師だ…」
ご愛読ありがとうございます。
これからの投稿の励みになりますので、
宜しければブックマークと評価をお願いします。




