秋風家とアイヤン族
魔王あいうえおが、高らかに自己紹介をした。
さて、どうすればいいのだろう。
この魔王が言う通り、力が欲しいのは確かである。だが、自分たちの手で倒したいのも確かである。どっちを取ったらいいのやら…
「ならば、吾輩たちは加勢しない。力だけくれてやる」
まるで心を見透かされたみたいに、魔王の言葉が返ってきた。魔王はさらに言葉を続ける。
「ただし、その際には、吾輩の仲間をこの村などに住まわせてほしい」
さあ、どう答えればいいんだろう。でも、ここまで来ちゃったのなら仕方ないか。と思い、棟梁は許可を出した。魔王は、アイヤン族全員の力を10倍にした。
そうして、全然疲れずに、秋風村へ侵攻することができた。
秋風村に着いた。仲間が力で相手に勝っているのを見ると、嬉しくてたまらなかった。
戦いは終わろうとしていた。その時、村長夫妻とその子が住居から出てきた。私はそれを発見した。襲った。村長、ひるんだ。子、逃げた。村長の妻は…
な、な、なんと、村長の妻が魔法を使っているではありませんか‼
と、いうことで、村長の妻と戦った。今のアイヤン族の力とは比べ物にならなかった。勝った。
だが、戦いはこれでは終わらない。捕縛したもの、逃げたものの処分をどうするか。これは、棟梁一人に判断が委ねられたのだ。
考えた末に出した結論とは、
「とりあえず、皆を生け捕りにせよ!」
しかし、棟梁だからと、うかうかできない。棟梁は、皆の信頼を集める的であり、お手本なのである。つまり、命令するからには、自分も、ということだ。
棟梁は、村長とその子を追いかけた。戦いでいちばん重要な人物が、いちばん重要な人物と向き合わなくてどうする。ちなみに、村長の妻は、すでに捕縛済みである。
村長は、捕まえた。あとは、村長の子だけだ。
棟梁は、一生懸命追いかけた。もしここで逃がすようなことがあったならば、棟梁としての地位もプライドも地に堕ちるだろう。それだけは、それだけは…
村長の子を見つけた。
胸が高まった。
これ以上逃げるのを阻止しなければ。
そう思って、棟梁は、村長の子の服を掴んで、拳を突き出した。拳は村長の子に見事命中、村長の子は吹っ飛んだ。
あとで知った話なのだが、村長の子の名前は秋風ユウタという名前で、当時5歳だったようだ。
すべての戦いが終わった。結果はアイヤン族の圧勝だった。
戦いのあとの秋風村の人たちの処分については、棟梁が決めた。ほとんどの者が、捕虜としてアイヤン族の下で働くことになった。秋風ユウタも、この中に含まれていたが、子供であるとして、働くことはしていたものの、学校にも行かせていた。学制がなく、義務教育がないこの時代に学校というものがある事自体異例だったが、アイヤン族としては、個人の学力向上のために、学校らしきものが設立されていた。もっとも、秋風ユウタが学校に居場所があるかどうかは、棟梁にとって関係がないことであったが。
秋風ユウタの両親、すなわち村長夫妻は、今後そのリーダーシップや人望で反乱を起こすかもしれないとされたため、その処分は極秘事項とされた。
こうして、処分も終わり、本当にすべての戦いが終わった。
秋風ユウタが村の外へ脱走し、魔物と戦うのは、5年も先の話である。
次回「秋風ユウタとアイヤン村」




