表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/80

第70話 6封印

ダスティスはこの全てを蝕む魔素を祓いたかった。それが現実となりつつある。だが、懸念している混沌の魔団は動きがない。不気味だった。


「このまま、何もないわけがない…」


 魔都の警備は戦時中かと見紛うほどに厳重だった。しかし、ダスティスの不安は大きくなるばかりだった。


「アオイ様がいらっしゃいました」

「そう。すぐに行くわ」


 ダスティスはすぐに謁見室へ向かった。


(私はまた、あなたに頼ることになるのね…)


 ダスティスはアオイを友人として尊敬していた。尊敬し、信頼しているからこそ、アオイが混沌の魔人の業を背負い過ぎていることもわかっていた。


(ヒスイさんがいなかったら、アオイに封印の解呪なんて頼めなかった)


 アオイは変わった。ヒスイという相棒を得てからは仲間を頼るようになった。アオイに感じていた"あやうさ"がなくなり、強さを感じるようになった。


(昔のアオイだったら、一人で行っていただろうな。そして無理をする…。アオイは良い相棒を得た)


 ダスティスは謁見室の扉を開けた。そこには晴れやかな笑顔のアオイがいた。頼もしい仲間達と一緒に。ダスティスはその光景が眩しくて目を細めた。


「私達は6封印へ向かうよ。最後の封印だ」


 ダスティスはふと昔のことを思い出していた。ベルクやアンナ、アルデイ、ジンライ。そしてアオイとの旅の思い出。


「アオイに絵を描いてあげたことがあったわね」

「うん?ああ。アスラ王国の私の家に飾ってあるよ」

「封印の解呪が成ったら、このパーティの絵を描かせてくれないかしら?」


 皆、顔を見合わせたがミカヅチがすぐに答えた。


「それはとても光栄なことでございます」


 ダスティスは頷いた。ダスティスは遠くない日に清々しい地となった魔都で絵を描く自分の姿を想像していた。

 




 6封印。魔都から約5日の距離にある。6封印の解呪にはアオイ、ヒスイ、α班の合計七人であたる。出発前に、アオイは久しぶりにマオの姿を見た。


「マオ、ずっといなかったね。何していたの?」

「ふふん。僕はモールスと空間転移魔法の特訓をしていたのだよ」


 マオは胸を張って自信ありげに答えた。


「お、空間転移はできるようになったの?」

「いえ、できませんよ」


 でも、今日のマオはなぜか自信満々である。


「え?じゃあ、何でそんなに自慢顔なの?」

「特別ですよ。アオイさんには見せてあげる」


 マオは右手に風の魔剣、左手に魔素を込めた。そして、左手で空間にひずみを作ると、複数の出口を作り、右手の魔剣で斬った。二十歩先にあった三本の木が、幹を切断されて倒れた。


「ふふん。これで多重的に離れた敵を斬ることができるんだよ」


 マオは左手で空間に複数の"出口"を作る事ができるようになった。この複数の出口をうまく使えば、一連の動作で複数の敵に同時に攻撃ができる。


「マオは二十歩ほどの距離なら、複数の敵を同時に切り伏せられるということだね」

「その通り!」


 マオは長く尖った耳をピクピクさせながら言った。


「でもマオ。高度な魔法技術だと思うんだけど、これだけできたら空間転移魔法もできるんじゃない?」


 マオはハッとした顔をした後に小さい声でつぶやいた。


「小さな穴はたくさん、開けられるんだ。でも大きな穴を開けられないんだ…」

「ふふふ、脳筋なマオらしいね」


 その言葉にマオは反応する。


「ああーん、アオイさん。そんな事言わないで!!」


 アオイに泣きすがったマオを、ヒスイが引き剥がす。


「マオ、アオイにくっつかないで!離れて!」

「良いでしょ。たまには僕にもくっつかせてよ」

「ダメ!」


 イチャイチャし始めた二人を見ながらも、アオイはマオの戦闘センスに感心していた。

 




 出発から5日後、アオイ達は6封印を目の前にしていた。6封印のある塔はのどかな湖のほとりにあった。それだけに不気味だった。


「とてもきれいな所ですね。でも今までで一番嫌な感じがします…」


 ヒスイの言葉にアオイは頷いた。きれいなだけなのだ。生物の営みを感じない。


「魔都で説明した通り、ちょっと解呪に手間取ると思うのと…」


 アオイはここで皆を見回した。


「最後の封印だ。魔団の妨害も考えられる。だから解呪にはヒスイとルカ、その他はマオの指示で周囲の警戒をお願いしたい」


 いつになく真剣な表情のアオイにマオは緊張した。


「任せて、アオイさん。解呪に危険はないの?」

「うん。大丈夫だと思う…」


 マオは心配そうだったが、思い直したように元気に答えた。


「周囲は僕達が守る。アオイさんは解呪に集中して」

「ありがとう、マオ。よし、ヒスイ、ルカ。行こうか」


 アオイとヒスイ、ルカの三人は封印の塔の中へと進んだ。


「何もありませんね」


 空間認識魔法を使いながらルカが拍子抜けした様子で呟いた。塔の中は特に何もなかったのだ。ただ、濃厚な魔素と無機質で気持ち悪い雰囲気の通路が続いていた。


「いや、アオイさん。塔を囲まれていますね。魔団…かな…」

「きっと、魔団の連中だね。マオ達が何とかしてくれると思う。魔団に空間転移魔法を使える奴がいる。警戒は厳重にね」


 いつになく慎重なアオイの様子にルカは気を引き締め直した。塔の最深部まで何事もなく到着した。そこには例の石板があった。アオイはまず、腐敗の罠を壊して、息を整えた。


「ヒスイ、竜の魔装を貸してもらうよ」

「はい、お返しします」


 ヒスイは竜の魔装の起動版をアオイへ渡した。アオイは竜の魔装を装着する。さらに闇の魔素を身にまとう。ヒスイはアオイのその姿に身慄いした。


(アオイが竜の魔装を壊してしまったはずだ…。何て魔素の量なの…)


 アオイは竜の魔装に魔素を込めると、不可視の障壁を作り出した。


「よし、封印を解呪するよ」


 アオイは石碑へ闇の魔素を込めていく。刻印がひとつ、またひとつと消えていく。そして最後に魔石が割れた。その瞬間にアオイは竜の魔装に最大限の魔素を込めてレジストを行った。


「ぐっ、くくっ」


 アオイがレジストを展開すると同時に石碑を中心にとても強力な刻印魔法が発動した。その刻印は膨大な魔素をアオイへと集中させて、その身体に"呪い"を刻み込もうとした。だが、刻印の放つ魔素は竜の魔装に阻まれてアオイには届いていなかった。

 

 このまま、乗り切れる!!————ヒスイはそう思った。しかし、それは突然だった。


「ヒスイさん!来る!!」


 石碑の前の空間が裂けた。空間の裂け目から強力な魔法が発せられようとしている。ヒスイは躊躇なく、最大限のパワーで電磁砲を空間の裂け目へと打ち込んだ。


「ヒスイさん!まだ来る!!」


 ルカが警告したのと同時に空間の裂け目からブエノスが現れた。



お読みいただき、ありがとうございます。気に入っていただけましたら是非、評価、★、フォローのほどよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ