26:任務を達成しました
建国祭のあと、メーテルはアルシオとともにベツィリアの離宮へ向かった。
薄暗くなってきた庭を進む。
(これで任務は完了しました)
これでアルシオから頼まれた役目は終わった。
エマに着替えさせてもらい、メーテルの本来の姿に戻る。
「ありがとうございます、エマさん」
「お礼を言うのはこちらのほうですよ。ベツィリア様を助けてくださって感謝します」
言うと、エマはテキパキとドレスを片付けにいってしまった。
(やりきった感じはありますけど。寂しい気もしますね)
それに、仲良くなってしまったからこそ、アルシオの今後が心配でもある。
「それにしても、まさか私が発見した怪しい男性が、ハインリー様の命を狙っていたとは。顔をしっかり覚えていてよかったです」
「一般の使用人に化けたり、給仕に化けたりと器用な奴だったな。捕まってよかったが、メーテルが飛び出したときは冷や冷やした」
「すみません。ハインリー様のこととなると、放っておけなくて……」
「まあそれが、メーテルのいいところだよな。本当に兄上はいい侍女を得たと思う」
メーテルに心配されていることを知らないアルシオは、離宮の居間に到着すると、騎士らしく跪いてメーテルに礼を言った。
「メーテル、感謝する。おかげで、建国祭を乗り切ることが出来た。俺の寿命も延びたよ」
「そんな、アルシオさん、立って下さい。私のほうこそ、お世話になりました」
役立たずなメーテルだが、ベツィリアの影武者として彼の役に立てて嬉しかった。
必要としてもらえた。
「あの、ベツィリア王女は、今後は……?」
「予定通り、徐々にフェードアウトさせていくつもりだ。婚約者のエルロンことは……少し心配だけどな」
立ち上がったアルシオは、何か気がかりな様子を見せている。
メーテルはそんな彼が心配だった。
「こ、困ったことがあれば、いつでも声を掛けてくださいね」
「ありがとう、この礼は追って……」
「また離宮に顔を出してもいいですか?」
「もちろんだ」
メーテルはただの侍女で、ベツィリアは王女。
本来、おいそれと遊びには行けない身分差だ。
それでも、彼が友人のように受け入れてくれて嬉しかった。
「それじゃあな」
「はい、失礼いたします」
ちょっと寂しいけれど、これから先も、アルシオとしての彼と会うこともあるだろう。
メーテルは軽い足取りで、離宮をあとにした。




