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24:晩餐会が始まりそうです

 しばらく控え室で休憩したら、そのあとは晩餐会に出席しなければならない。

 メーテルはアルシオから、このあとの動きを教えられる。


「食事の席では、最低限の会話だけでいい。ベツィリアは大人しく病弱な王女だから、それで不自然ではないはずだ」

「わかりました。おしとやかに食事します。でも、王宮のご飯は完食したい……」


 病弱な設定なら、全部は食べないほうがいいのだろう。

 しかし、王族仕様の豪華な料理を前にしたら、絶対にたくさん食べたくなる自信があるメーテルだった。

 ふと、アルシオがメーテルを見つめて告げる。


「メーテル、俺の我が儘な依頼を受けてくれてありがとうな。正直、自分でも無茶振りしている自覚はある」

「いえいえ、綺麗なドレスを着られて、髪も可愛くしてもらえて、私は嬉しいですよ」


 突然依頼をされた身だが、アルシオには本当に感謝しているのだ。

 大好きな可愛い格好も、これでもかと言うほど堪能できていた。


「アルシオさんとも仲良くなることができましたし?」

「そ、そうか」


 アルシオは照れている様子だ。いつになく、そわそわしている。


「王宮内の興味深い行事も拝見できました。とても楽しいお仕事です」

「メーテルは見かけによらず豪胆だな」

「淑女らしくないでしょうか……」


 少し考え、アルシオは首を横に振る。


「どうだろう? 王宮で見かける女たちとは違うが、そういう淑女が一人くらいいてもいいんじゃないか? 俺はお前のほうが話しやすくて助かる」

「……あ、ありがとうございます?」


 淑女にはなりきれていないようだ。

 それどころか、騎士にも、侍女にもなりきれていない。


(私、全部が中途半端です)


 このままでいいのかという葛藤があるのに、今すぐ何かを決められもしない。

 けれど、アルシオに、そのままのメーテルを認めてもらえたようで、なんだか嬉しかった。

 ふと、アルシオが手元の懐中時計を確認する。


「そろそろ、晩餐会の時間だな」

「は、はい。行きましょう」

「言っておくが、本番はこれからだ」

「……気を引き締めます!」


 王都へ来てアルシオと友人のような関係になれた。

 これも悪いことではない……はずだ。


 食事会場もまた、大広間と同じように豪華な空間だった。

 高そうなカーテンや絨毯に囲まれた空間の中央にとても長いテーブルが置かれている。

 棚には、一つ売れば一生暮らしていけそうな調度品の数々が並べられていた。


 ベツィリアの席は、家族の中では一番下座にある。

 上座である最奥に国王、彼の両サイドには第一妃、継承権第一位のハインリーがそれぞれ座っていた。

 続いて第二妃から第四妃と彼らの子どもたちという順で、ざっくり並んでいる。


(ハインリー様は、やはり特別なのですね)


 まだ正式に、王太子が決まっていないとはいえ、他の王子立ちより抜きん出た存在のようだ。

 国王も、敢えてそう見せかけている。

 いずれ、彼を王太子にするつもりでいるのだろう。


(だからこそハインリー様は、命を狙われてしまうことが増えるのでしょうね。お気の毒に)


 妃同士は互いに睨み合っている。

 王子同士も母親たちに倣うように険悪な空気を醸し出していた。

 わかりやすすぎる……。


(胃が痛くなりそうな晩餐会です)


 大人しく座っていると、たくさんの料理が運び込まれてきた。

 給仕係の使用人たちが巨大な皿を手に持って入場してくる。


 色鮮やかで繊細な盛り付けの前菜のサラダ、白いパン、キノコの入ったスープ、ジューシーな鶏の丸焼き、スパイスたっぷりの煮込み料理、籠に盛られたフルーツに、天辺に砂糖をまぶした巨大なホールケーキ。


(見たことのないくらい豪華です! このお仕事を引き受けて本当によかったです!)


 つつましい表情を浮かべながら、メーテルは内心大喜びしていた。


「アルシオさん、今日はベツィリア王女の体調がいいことにして、全種類食べてもいいですか?」


 小声で、すぐ背後に控えるアルシオに尋ねてみる。


「だ、駄目に決まっているだろう……! 病弱な王女がモリモリ食べるなんて不自然だ」

「でも、ちょっとくらいなら……こんな素敵なお料理、初めてなんです」

「……そこまで言うなら、少しずつだけだぞ」

「ありがとうございます」


 メーテルはとても嬉しくなり、わくわくした気分で食事の開始の合図を待った。

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