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21:王妃や王子の確執を見ました

 会場の一角、一段高くなっているスペースに、多くの女性の取り巻きが侍る空間があった。

 ファーの付いた大きめのソファーが置かれており、その中央に第二妃が優雅に腰掛けている。

 息子のソワレは所在なさげに、ソファーの横に突っ立っていた。


(わかりやすく、つまらなそうですね……)


 取り巻きも、王子というよりも第二妃に侍っている感じだ。

 アルシオが手前に立っていた執事のローレンスに取り次ぎを頼み、メーテルはベツィリアとして第二妃に挨拶する。

 取り巻きたちが道を空け、メーテルは第二妃の正面まで進み挨拶する。


 第二妃はいかにもな上流階級の女性という出で立ちだ。

 華やかに結われた髪にセンスのいいドレスを身に纏っている。第一妃より少しだけ年下に思えた。

 他国の出身ながら、第二妃は社交界では大きな影響力を持っているらしい。


「久方ぶりにお目に掛かります、第二妃様」

「あら、ベツィリア。庭でリハビリしていたことは、ローレンスから聞いておりますわ」

「はい、お恥ずかしながら。少しでも体力を付けたくて……」

「良い心がけですわ。リハビリも、第三妃より先にわたくしに挨拶に来たことも」

(えっ……)


 メーテルは、こそっとアルシオをチラ見する。


(そういえば、第二妃と第三妃は複雑な間柄でした。第二妃は序列二番目の王妃様ですが、最初の子を亡くされ、ソワレ様は三番目……)


 そのあたりで、第二妃と第三妃の争いがあるようだ。

 アルシオは澄ました顔をしていた。これでいいらしい。


「ほら、ソワレ。妹にご挨拶なさい」


 第二妃に促され、ソワレはおずおずとメーテルの近くに来る。


「ソワレお兄様。本日もご健やかにお過ごしのご様子で何よりです」

「え、あ……ベツィリア、数日ぶり……」


 もそもそと、ソワレが言葉を返す。

 母親とは違い、彼はこういう場所が苦手なようだ。

 彼の代わりに、第二妃が喋り出す。


「どうかしら、ベツィリア。このままここで、私たちとお話ししていきませんこと?」


 まだ、第三妃や第四妃への挨拶が済んでいない。

 第二妃も、もちろんそれはわかっている。

 その上で、二人を無視しろと言ってきているようだ。


(私……というかベツィリア王女を自陣営に加えたいという感じでしょうか?)


 病弱で表に出られない身ではあるけれど、ベツィリアはれっきとした王女。

 第二妃はベツィリアが役に立つと考えている様子だ。しかし……。

 不意にメーテルのすぐ後ろで、大きな声が上がった。


「ここにいたのか、ベツィリア!」


 誰かが、この場に乱入してきたらしい。

 振り向く間もなく、左の手首を掴まれる。


「さっさとこっちに来い!」


 振り向くと、横柄な態度の赤髪の男性がイライラした様子でメーテルを睨んでいた。


(げっ……第二王子のカイル様!)

 彼はかつてハインリーの執務室に乱入し、部屋を荒らそうとし、毒蛇に慄いて逃げていった迷惑な王子だ。


(正直、苦手な人です)


 メーテルの印象の中の彼は、「ハインリーの対極に位置する駄目な王子」なのである。

 突然乱入してきたカイルを前に、第二妃が不愉快そうに扇を開いてパタパタと仰ぐ。


「あなた、ベツィリアはソワレと話している最中でしてよ」

「はあ? そいつにまともな話なんて出来るわけがないだろ!」


 カイルは、小馬鹿に仕切った視線をソワレへ向ける。

 ソワレはと言うと、黙り込んで俯くだけだった。


(王子同士の力関係は、カイル様のほうが強いのかもしれませんね)


 完全に、いじめっ子といじめられっ子という図だ。

 そちらに気を取られていると、左の手首をぐいっと引っ張られた。


「ひゃあっ」


 乱暴に扱われたベツィリアはよろける。


(ええと……私なら、ここで踏ん張れますけど。今はベツィリア王女ですからね)


 病弱なお姫様なら、そこまで力強く踏ん張れないはずだ。

 メーテルはそう判断し、よろよろと強引な第二王子に引きずられていった。

 そのあとを、若干焦った様子のアルシオが追いかけてくる。


(ベツィリア王女の演技はバッチリのはずです……)


 なかなか上手くベツィリア王女をやれているのではないかと、メーテルは内心で自画自賛していた。

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